14 Okt-
6:30起床。 いよいよ迎えた最終日。 今日は電車の都合でかなりゆっくり起床。 行程が厳しかった前半戦を乗り切ったので後半は余裕である。 しかも一昨日にはセブンセンシズどころか阿頼耶識にまで目覚めてしまったからな。 パワーアップした我輩に、もはや厳しい行程などないのだ。 ・・・ん~むむ~ イナバウワー!! 背筋をシャッキリ伸ばして朝飯・・・といきたいところだが、 バタバタと朝飯を食うのであろう人間の足音が聞こえた。 もはやホテルの朝飯に期待などしていない。 金を払ってでも別で食べることにしているので、ゆっくり準備をする。 相変わらずリュックはパンパンだ。 途中で弾けたりしないか極めて心配だ。 寝まきは今夜着たら捨てよう。 サクッとチェックアウトしてクソホテルに別れを告げ、 駅のカフェでチョコワッサンとミルクコーヒーを食し、 8:00発のICEでベルギーの首都ブリュッセルに向かう。 お、最新型のICEだ。 どっかで乗る機会が無いかなぁと思っていたので、かなりウレシイぞ。 パスが無かったら高くて絶対乗れないICEの1等車。 自由席を探すと、運良く1人掛けの席がブリュッセルまで空いていた。 おぉぅ、テレビ付いてまっせ。 そしてまるで社長室に置いてそうな革張りの座席だ。 座り心地も抜群である。 ケツが沈み過ぎない固めのクッション。 最高♪ VSに導入したいぐらいだ。 緊迫した検札も、書いてきた言い訳文とチケットを見せて無難にパス。 電車はケルン、アーヘンを一気に走り抜けていく。 昨日の旅を反芻しながら車窓を楽しんだ。 ドイツ版新幹線とはいえ、走る線路の大部分は普通の列車と同じ。 高速線を過ぎると、そんなに速く走ってはくれなかった。 そして10:45、ベルギー最初の停車駅リエージュに着いた。 すごく古そうな街並だ。 っていうか、ある意味廃墟に見えなくもない。 ベルギーに入ってからというもの、 本当に人が住んでいるのか分からないぐらい古い街並が見えるようになってきた。 走っている距離は東京から大阪ぐらいなのに、 国によって全く景色が違うので、車窓に飽きることはない。 そして11:37、終着駅のブリュッセル南駅に到着。 光が差し込まない上に蛍光灯が少ないため薄暗く、 何だか雰囲気が悪い。 ブリュッセルってもっと華やかなイメージがあっただけに、かなり幻滅である。 さて、今夜の宿はブリュッセルだが、昼間の見学地はここではない。 いつも旅の最終日は消化試合のようになってしまいがちなので、 今回はラストにも気合いを入れた訪問先を設定したつもりだ。 そのためにわざわざベルギーにやってきたのだからな。 これから向かうのは、Antwerpen(アントワープ)。 アントワープといえば、そう! フランダースの犬! まさに旅のラストを飾るに相応しい場所であろう? アントワープでは結構歩くことが予想されるため、身軽になることが重要だ。 まずは荷物を入れるべく、ロッカーを探す。 前述の通り薄暗い構内を数少ない案内板を頼りに歩いていく。 しかしここは本当に首都の玄関口なのか? 人もまばらだし、少し怖いぐらいだ。 ひたすら歩き回ってロッカーに荷物を入れ、12:12発の列車でアントワープへ。 1等車に座り、車窓からホテルの方角を確認。 大通りが見え、それに沿って歩けば何とかなりそうだ。 全てにおいて目視で確認しておくことが重要だ。 とにかく大切なのは、転ばぬ先の杖である。 ブリュッセル南駅で少し緊張したせいか、座った途端眠気に襲われ、 ウトウトしてたら検札で起こされた。 黙って言い訳文とパスを見せる。 この「黙って」というのがミソだ。 相手に有無を言わせない、 もはや私は何も分かりません というオーラを体中から発散するのである。 案の定、女性車掌はニッコリ笑ってパスを返してくれた。 作戦勝ちだな。 列車は13:20、アントワープ中央駅に到着。 ちなみに、欧州の大都市には基本的に中央駅や北駅、南駅などがある。 もしこれを読んでアントワープに行こう!と思った人のために書いておくと、 主要な国際特急は中央駅は通過せず、アントワープベルヘム駅を通るのみ。 アントワープ中央駅へは、ローカルに乗り換える必要があるのに要注意だ。 中央駅は、我輩が大好きな古めかしい空気に満ちていた。 しかし今日はまだ何も見ていないのに、すでに13:30。 急いで街へ繰り出す。 目指すはただ1つ。 ネロ少年とパトラッシュが昇天した大聖堂だ。 メインストリートを歩いていくとワッフル屋発見! これは食うでしょ。 温かくて、んま~い♪ これで我輩もワプっ子の仲間入りだ。 もう1つ食おうかと思ったが、それは後にしよう。 で、大聖堂はどこなのよ。 メチャクチャに歩き回り、散々道に迷っていると、 思いもしない方向に大聖堂の鐘楼が見えた。 何であんな方に・・・? まぁいい。 広場を横切り大聖堂に急ぐ。 手前の銅像は、ネロ少年が憧れたルーベンス。 近くで見るとやっぱりなかなかのものではないですか。 ちなみに大聖堂の鐘楼が片方しかないのは、資金が無くなって片方しか造れなかったからだ。 でっかいですなぁ。 こいつも全然フレームに入りきらないや。 そして大聖堂の正面は広場になっていて、 ネロとパトラッシュの絵が浮かび上がるベンチがあった。 これは日本人が設置したもの。 有名な話だが、ベルギーではフランダースの犬は全くの無名作。 あまりにも日本人からの問い合わせが多いので、 地元観光協会が調べだしたのも最近のことなのだ。 ところでこちらはあまり知られていない話で、あの物語自体はフィクションだが、 設定は当時に忠実に作られているらしい。 さて、いよいよ大聖堂に入ることにしましょうか。 では物語を思い出して泣いていただきましょう! これがアントワープ大聖堂です! キーンコーンカーンコーンキーン・・・ タラララタッタッタッタッ ♪ランランラーンランランラーン ネロ少年もここを歩いたんですなぁ・・・。 クリスマスイヴの夜、彼はここにたどり着き、そして天に召されたのであります。 大学時代、バイトもせず大学にも行かず、ひたすら家に籠もっていたあの頃。 夕方にやっていたフランダースの犬をついつい毎日観てしまったあの頃。 まさかこの目で本物を見に来ることになろうとは。 そう思うと、思わず鳥肌が立った。 そして中央祭壇の両脇に飾られたルーベンスの絵。 キリストの昇架と降架。 作中、絵には布が被せられ、金を払った人間だけが見ることができた。 これこそが、ネロ少年が見たくて見たくて仕方なかった絵である。 ヤバイ、またしても鳥肌が。 いかにクールな鉄仮面偽スナフキンをもってしても この内から沸き上がる感動を押さえることは出来ん。 モナリザやゲルニカを見ても何とも思わなかった我輩が、しばらく絵に見入ってしまった。 そして欧州では珍しく、ちゃんと絵の解説が日本語でも書かれていた。 フランダースの犬についても簡単に説明が書かれている。 オーイオイオイ(T_T) 泣かせてくれるじゃねーか! ルーベンスの絵をしっかり目に刻み、ぐるっとひと回りして一旦外に出たら、 またあの絵が見たくなってしまった。 結局また2ユーロ払って中へ。 あぁネロ少年は金が払えなくて見れなかったというのに、何という傲慢な我輩。 許してくれネロ少年。 またしてもしっかり目に刻む。 あぁ何だか毒に満ち満ちた我が身が清くなっていく感じだ。
・・・。
偽スナフキン、ウッカリ昇天してしまいましてございます。 こうして私は、スッカリ清くなって外に出ました。 大聖堂の西側には市庁舎があります。 これまた立派な建物で、フランダースの犬にも登場しています。 コンクールの結果発表が行われたのがここなのです。 不幸続きのネロ少年の人生にトドメを刺したシーンでありましたね。 さてさて、当初は大聖堂だけ見て他へ行くつもりでしたが、 作中でネロ少年が生活していたというホーボーケンに行ってみたくなってしまいました。 他へ行くには少し時間が足りませんし、せっかくの機会です。 ホーボーケンへ行ってみることにしましょう。 地球の歩き方によりますと、4番トラム(チンチン電車)の終点がホーボーケンだそうです。 またしてもといいますかやっぱりといいますか、道に迷ってしまいまして、 全然違う駅からトラムに乗りました。 トラムはアントワープの中心街から郊外へ走っていきます。 作中、ネロ少年とパトラッシュはホーボーケンからアントワープへ牛乳を運んでおりましたが、 2人が歩いた道も今や都会の舗装道でございます。 ホーボーケンまでは約40分。 意外に遠かったです。 ホーボーケンから1つ手前の駅、キオスクプラッツへ戻っていきますと、歩道に周辺案内図がありまして、 そこを左に折れるとネロ少年とパトラッシュの銅像がありました。
・・・。
う~ん、ハイジといいこの銅像といい、 もう少し何とかならなかったんでしょうか。 これでは二宮金二郎でございます。 やはり欧州テイストは日本人には受け入れがたいと思われます。 銅像の裏手には観光協会がありましたが、土日はお休み。 残念。 パトラッシュの頭を撫でて、ホーボーケンを後にすることにしました。 ちなみに、ネロ少年が仕事を失う原因となった風車もあるらしいのですが、 少し遠いのでそれは諦めました。 ちょっと歩いて見て回ってから帰ることにしましょうか。 キオスクプラッツ駅の前にある教会。 一応2人はここに葬られていることになっているそうであります。 アーメン。 所在なく歩き、ホーボーケン駅から中心街へ帰ります。 先ほどの大聖堂周辺は異様に混み合っていて、 歩いている人にすらドンドン追い抜かれるので、 途中で下りて大聖堂まで歩きました。 さて、デジカメ用に4ギガ持ってきたSDカードのメモリーが無くなりました。 張り切って撮り過ぎましたね。 まぁこうなるとは思ってましたが。 きっと6ギガあっても10ギガあっても足らなくなったでしょう。 私とは、そういう人間なんです。 観光案内所でカメラ屋さんの場所を聞き、512メガのメモリーを購入。 またこれで撮りまくれますね。 さ、ブリュッセルに帰ることにしましょう。 駅へ向かってスイスイと歩いていたつもりが、 やっぱり全然違う方向に歩いてしまって、結局散々歩いて駅に戻りました。 もはや私の方向感覚は全くあてにならないようです。 さすがにお腹が空いたので、プリングルスと紅茶を買って、ブリュッセル行きに乗り込みます。 後はブリュッセルの世界遺産グラン・プラスを見るだけです。 そして旅は終わるのです。 はぁ~最後まで良い旅でしたし、 偽スナフキン、生まれ変わったように清くなって旅を終われそうです。 ありがたいことです。 神様ありがとうございます。
・・・しかしこの後、ありがたい気持ちの私を 人生最大の苦難が口を開けて待ち受けていたのでした・・・。
18:20、ブリュッセル南駅に戻りました。 グラン・プラスへは、ライトアップが見えるよう日が落ちてから行くことに決め、 一旦ロッカーからリュックを出して、ホテルに荷物を置きに行きます。 旅行社のガイドによると、今夜のホテルの最寄り駅は地下鉄のClemenous駅のようですので、 地下鉄の駅に行きます。 どうやら地下鉄の駅は、一旦南駅から外に出るようですね。 やはり雰囲気は良くない気がするので、 リュックを持つと、いやが上にも緊張せざるを得ません。 足早に地下鉄の入口に向かいますと、同じ入口に向かう3人組のお兄ちゃん達が見えました。 ふとその時、私のセブンセンシズが 危ない! という信号を発しました。 しかしここで方向転換するには無理がありました。 スペインでも何もなかったし大丈夫でしょう。 人間、見た目で判断してはいけません。 そう思い、エスカレーターに乗りました。 するとやはりお兄ちゃん達もエスカレーターに乗ってきました。 頭の中では緊急警報が鳴りまくっております。 ベルト側に体を向け、じっと立っておりますと、 3人の内うち2人が、私の一段下で立ち止まりました。 こちらに背を向けておりますが、それまで歩いて降りてきたのに、 明らかに変です。 究極に緊迫しておりましたが、そのままエスカレーターが終わりそうでした。 何もなかったじゃん。 やっぱり人を見た目で判断しちゃダメですね。 そう思ったその時、3人目のお兄ちゃんが、 私の肩を叩いて何か言いながらエスカレーターを降りていきました。 何を言ってるか分かりませんでしたので、苦笑いして3人から距離を取りました。 何はともあれ、何もなくて良かった。 そう思ったその時、また3人目のお兄ちゃんが戻ってきて言いました。 言ったというか、ジェスチャーをしました。 背中背中。 ・・・。 直感的に、ジャケットに何かされたことを悟りましたが、 やはり私という男は冷静でした。 セブンセンシズが私に呼び掛けます。 今ジャケットを脱いじゃいけない!! 脱いだ瞬間に手荷物を奪われてしまうよ!! 私はやはりよく分からないフリをして、地下鉄のホームの方へ歩いていきました。 すると、歩き去っていったハズの3人目のお兄ちゃんが また私の所まで帰ってきて言いました。 というか、ジェスチャーしました。 背中背中。 ・・・。 もはや確信犯です。 相手にはできません。 無視して歩いていきますと、 今度は普通の通行人らしき人が歩み寄ってきて私の肩を叩いて言いました。 というか、ジェスチャーしました。 背中背中。 ・・・。 ここまで言われると、一体何をされたのか気にならないわけがありません。 地下鉄の自動券売機の横で、壁を背にし、 荷物をしっかり確保してジャケットを脱ぎますと・・・。 背中と右腕にベッタリ「たん」がついておりました。 ・・・。 なんじゃこりゃーっ!! アリエナイ! アリエナクナイ!!?? すぐにジャケットを脱いで地下鉄のチケットを買い、ホームに下りました。 いくら冷静沈着な私とはいえ、相当心拍数が上がっております。 周りの全てが敵に見えます。 ガタガタブルブル。 旅行社のガイドに書いてあるホテルの最寄り駅Clemenous で下車。 地上に上がり地図を見ると・・・あら。 このガイドの地図には 最寄り駅の場所が載っておりませんわ。 といいますか、 これでは何も分かりませんわ。 既に方向感覚が崩壊している私はどちらに歩いて良いのかも分からず、 自慢のセブンセンシズを頼りに歩きだしました。 何だかメチャクチャ寂れた街並。 公園で遊んでいる子供から接触事故でもめている人から 通行人まで見渡すかぎりの黒人の方々。 建物はすごく古そうだし、窓も割れていますね・・・。 この景色はまるで、写真で見たナイロビのようです。 そしてタンを吐かれたジャケット片手に道に迷っている私。 日は落ちかけているし、 激烈に心細くなってまいりました。 それでもあきらめずに歩いて行くと、遠目にブリュッセル南駅が見えてきました。 どうやらせっかく地下鉄に乗った2駅を戻ってしまったようです。(T_T) もうダメだ。 駅まで戻って、昼間車窓から見た大通りを歩くしかない。 そう思って駅の方へ歩いていきますと、 広場に散歩中のおばさんがいらっしゃいましたので、たまらず道を聞きました。 「ペラペラペラペラペラリーノ」 フランス語ですか??(T_T) しかし指を差して下さったので、とにかくその方向に突進します。 早くしないと日が暮れてしまいますからね。 すると、前述の大通りに出ました。 ここなら旅行社のガイドに載ってますよ!! 思わず泣きそうになりました。 必死に歩いて歩いて、ようやくホテルに着いたのは19:00前でした。 カウンターにいらっしゃったのは、陽気な黒人コンシェルジュ。 マップを持ってきて、色々案内をしてくれました。 ここは、これから行く予定のグラン・プラスにも近いようです。 チェックインをして部屋に行きますと、そこはまるで屋根裏部屋。 何ですかコレは!! あっと、そんなことはさておき、ジャケットを何とかしなければなりません。 もう着る気は起きませんから、跡が残らないように少し拭いて、 パッキングしてしまうことにしましょう。 これは思い入れのある大切なジャケット。 捨てるわけにはいかないのです。 私があの時エスカレーターを下りるのをやめていたら、こんなことにはならなかったのに・・・。 私の慢心が招いた結果ですね・・・。 ごめんよ。 ・・・。 ガックリしてジャケットの拭き上げをしていると、 自分がアリエナイほど惨めな存在に思えてきますね。
・・・。
ゴゴゴゴゴ・・・
ちょい待てや。
悪いのはオレか?
あのバカたれズッコケ3人組ちゃうんか!?
何やこの仕打ちは!! オレがベルギー人に何かしたか!? 全くベルギー人はこんなヤツしかおらんのか!? そらネロもパトラッシュも死んでまうわ!!! よぉし分かった。 これから日本でベルギー人を見かけたら 何じゃ文句あんねやったら罪もない日本人にタンを吐いたアイツらに言えッボケがッ!!! このジャケット何とかしろや!!! アンギャーーーッス!!!!(怒怒怒怒)
偽スナフキン、ここに復活。 もはや誰も信じないぞ。 やはり日本男児たるもの、昇天する時は世紀末覇者ラオウの如く、
ビキビキーッ わが生涯に一片の悔いなし!!
といきたいものである。 圧縮パックでジャケットをパッキングし、リュックの奥底へ封印。 貴重品は全てセキュリティボックスへ。 ベルギー人は誰も信じられない。 いや、信じない。 ほとんどの荷物を部屋に置き、少し寒いが長袖だけで外出する。 外はすでに暗く、大通りから少し入っただけなのに人気が無い。 これは・・・。 さらにグラン・プラスへ向かう途中の路地も異様な空気。 そんなに狭い路地でもないのに人っ子一人いやしない。 古い家並みにオレンジ色の街灯が静かに光っているだけだ。 これは怖い。 春に道に迷って入り込んだバルセロナの下町みたいだ。 ただその時にも増して怖いのは、家の窓に明かりが無いことだ。 人の気配が全くしない。 ゴーストタウンと呼ぶに相応しい。 三流映画なら間違いなくここで事件が起こる。 そして今その被害者になり得るのはまさに我輩である。 ブリュッセルってEUの中心を担う都会じゃなかったのか? とてもそんな風には見えない。 グラン・プラスまでは15分だと言っていたな。 こんな道を15分も・・・ガタガタブルブル。 ホテルでもらった地図にはちゃんと細かい路地まで書かれていたので、 迷わないようにしっかり地図を見て歩く。 迷ったら何が起きるか分からない。 しかし地図を見て歩くとはいっても、周囲の気配も探りながら歩かねばならない。 怖ぇ~っ!(T_T) 80回ぐらい後ろを振り向きながら、無事グラン・プラスに到着した。 世界一美しい広場と評されるブリュッセルの世界遺産だ。 丁度「’56ブダペスト」なるイベントが開催されていて、広場はお祭り騒ぎ。 みなさま大きなビジョンで流されているサンドアートに釘づけだった。 それを観ながら、広場の周囲を取り囲むように建つ建築物を見る。 (市庁舎) (王の家) 確かに世界一美しい広場と評されるだけはある。 で、階段で写真を撮っていると、 向かいにいた兄ちゃん達(っていうかガキ)が声を掛けてきた。 「ようこんばんは兄弟。ご機嫌かい?」 偽「オーマイブラザー、チョーご機嫌だよ!」 「オーご機嫌なのか兄弟。どっから来たんだい?」 偽「日本だぜい。君らは?」 「ココだココ。オレらはベルギー人さ。ココは良い場所だろ?」 偽「オーイエス!チョーご機嫌なプレイスだね!」 「だろ?楽しんでってくれよ兄弟」 偽「おうサンキューなマイブラザー」 ベルギー人は信用しないが、少し緊張が和らいだ。 そうだ。 まだ観光客がたくさんいるうちに、ご挨拶せねばならん御方がいらっしゃる。 ブリュッセルの最長老でいらっしゃる小便小僧、ジュリアン君である。 グラン・プラスから徒歩3分。 十字路の角で、今夜も彼は小便をたれていた。 思っていたより小さいとやたらに酷評の多い彼だが、あのサイズで十分だと思うけど。 あんまり大きな銅像がジャボジャボ小便してたら引くだろ。 ・・・あ、いや、下品な話題になってしまったな。 ジュリアン氏にしっかり挨拶し、 広場の入り口にある、触ると幸運がやってくるらしいプレートにも ちゃんと触ってからグラン・プラスに戻る。 腹が減ったからメシにしよう。 目についたオープンカフェに座り、メニューを開く。 何も読めないが、ビールとベルギー料理をオーダー。 ベルギーはビールの国。 飲むビールによってグラスが違うぐらいのビールマニアの国なのだ。 せっかくだから飲んでいかないとね。 1杯ぐらい飲んでも大丈夫だろう。 ベルギー料理はラザニアだった。 ジャケットが無くてかなり寒かったので、温かい料理はありがたい。 ビールはあまり強くないようで、スーパードライみたいな味で飲みやすい。 広場の喧騒を見ながら料理を楽しんでいると、 隣の家族連れがグイッと親指を立てて声を掛けてきた。 「うまいか?」 偽「んめーよ父ちゃん!」 我輩も負けじとグイッと親指を立てて答えた。 ベルギー人は全く信用に値しないが、会話というのは大事だね。 しかしビールのせいですっかり体が冷えてしまったな。 ラザニアパワーをもってしても、これは寒い。 それもこれも全てあのズッコケ3人組のせいだ。 さ・・・寒い・・・。 ラザニアの皿で暖を取り、お支払いを済ませて、また広場を歩き回る。 ホント、素敵な広場だと思う。 ベルギーに来たらぜひ来るべきだと思うよ。 ライトアップに浮かび上がる王の家をうっとり眺めていたら、ライブが始まった。 声の絞りだし方がインドとか東南アジアっぽかったが、 ’56ブダペストフェスティバルだからおそらくはハンガリーポップミュージックなんだろう。 歌声に誘われて、フラフラとライブを聴いた。 しかし手荷物には注意せねばならない。 金とデジカメをポケットに突っ込み、手を入れてガード。 万全の態勢でライブを楽しんだ。 どれもこれも同じ曲のように聞こえてさして興味がわいたりもしなかったが、 アンコールで歌った曲は何だか胸に響く歌だった。 ハンガリーポップミュージックらしきライブは22:00に終了。 地球の歩き方によると、22:00から派手なイルミが行われるらしいのだが、 いくら待っても始まらないのと、あまりの寒さに撤退やむなしと判断。 ホテルへの帰路についた。 ブリュッセルに着いた時よりはいくぶん気持ちも落ち着いてはきたものの、 こういう時こそ気持ちを引き締めねばならぬ。 遠回りであっても大きめの通りを歩いてホテルに帰った。 例のひょうきんコンシェルジュから預けていた鍵を受け取る。 偽「ルームキープリーズ。55号室だ」 「はいどうぞ。よんじゅうよん!?」 偽「ノーノー、ごじゅうご」 「アー!!」 オモロイやっちゃな。 オレはもうベルギー人は全く信用していないが、 君なら信用しても良い。 君が日本に来ても 部屋に戻り、荷物を整理する。 明日は帰国だ。 今日中にすべて整理しておかねば。 シャワーがあまりにもバッチかったので、メンズビオレ顔拭き用で体を拭き上げ、 荷物をリュックに詰め込む。 手荷物を最小限にしたため、リュックはやはりパンパンだが、 空港で預けてしまえば関係ない。 強引にパッキングした。 ようやく横になったのは23:30。 飛行機はゆっくりめだから、明日もそんなに早く起きなくていい。 テレビを観ながら今回の旅を反芻しているうちに、いつのまにやら寝てしまっていた。 Zzz・・・
本日立ち寄った世界遺産
15 Okt- 7:30起床。おっと寝過ぎた。 朝飯を食いに行ったら、 個人旅行者はまたしても狭い空間に押し込まれたテーブルでのバイキング。 これじゃあ美味いものも不味くなる。 ゲンナリしながらチョコフレーク親善大使だった頃を思い出しつつチョコフレークを食い、 カプチーノを飲んで出発。 今日はブリュッセルからフランクフルト経由で帰国する。 ついにヨーロッパともおさらばかと思うと実に悲しくなる。 ブリュッセル南駅には歩いていくことにした。 若干の不安はあるが、何しろ最寄り駅の場所が分からないのでね。 それにさすがに朝一番なら怪しい人もまだ寝ているだろう。 昨日もらったマップ片手に歩きだす。 明るくなってもやはり少し不気味な街並だ。 古い街並ってのはこんなもんかもしれないが、 窓が割れまくっている現状を前にすると、さすがにな。 何か出てきそうだよ。 駅が近づくにつれて新しいビルが見えるようになり、 ようやく安心して歩けるようになった。 駅に着くと、そこは奇しくも昨日の事件現場。 リュックの中に封印したジャケットの叫びが聞こえてきそうだ。 足早に現場を離れ、チケット売場に直行。 やたらに時間が掛かったが国際空港までの切符を買い、ブリュッセルを後にする。 さらば屈辱の街ブリュッセル。 せっかく清くなった心を台無しにしてくれてありがとう。 おかげで自分を取り戻せたよ。 ・・・二度と来ないぞ!! 魂の叫びが消えるまもなくブリュッセル国際空港に到着。 すぐにチェックイン。 見事デカリュックに膨張してしまったリュックを預け、最後のお買物。 スイスでもドイツでもろくに土産が買えなかったので ベルギーこそ!と意気込んだものの、やはり大した土産は見当たらず、 仕方無しにジュリアン君のキーホルダーを購入するにとどまった。 これから先腐るほどメシが食えることを勘案し、カフェはパスしてさっさと搭乗。 ハイジに始まりフランダースに終わった今回の旅。 押せ押せの強行軍で回った分だけ充実した旅だった。 いやぁやっぱり旅は良いもんですな・・・。 ・・・と、締めようと思ったのに、 神様はまだ我輩に試練をしっかり用意してくれていたのだった。 旅の回想も終わって良い感じに帰れそうな気分になったのに、 飛行機はいつまで経っても飛びやしない。 どうなっとんじゃいコレ。 そうこうしているうちに機内放送が流れ、客からはざわめきが起こる。 しかしいつものことながら、我輩には何のことかサッパリ分からない。 あまりにも動く気配がないので心配し始めた頃、飛行機はようやく動き始めた。 11:55離陸。 すでに定刻から40以上遅れている。 機内でも何度か放送が流れているが、我輩には何も分からない。 実はフランクフルトに向かってないんじゃないかと不安になっていると、 「まもなくフランクフルト国際空港に到着します」という放送が流れた。 しかしひと安心する間もなく、我輩はさらに衝撃的な事実に気付いた。 時すでにフランクフルト発関空行きのボーディングタイムなのである。 さっきから便名と名前を読み上げていたのは乗り継ぎ案内だったのか? 我輩の名前は呼ばれてないけど、 乗れるってことで良いのか!? これは緊張してきた。 12:50、フランクフルトに到着。 しかし止める場所が無いからと機内で待たされる。 イライライライラ・・・ スッチーがまた便名と名前を連呼しながら案内をしている。 我輩の名前は呼ばれない。 頼むから早く降ろしてくれ! 結局降りれたのは13:10。 関空行きの搭乗時刻は13:15。 案内板を見たところ、今いる所は一番遠いゲートだ。 何でまたこんな所で降ろすんかい!! とにかく走るしか手段が無い。 ハッ ヒッ クソッ 普段の運動不足がこんなところで露呈するとは! 息が・・・息が切れます!! すると、交差する通路からどんどん人が走り出てくる。 親子連れ、カップル、祖父母、マラソンランナーアベベやメコネンなどなど。 走る~走る~オレ~た~ち~♪ 思わず口ずさんでしまうぐらい、みんなゴジラ映画のエキストラ並に走っている。 ある意味笑える。 ・・・当事者でなければ。 負けるかコノーッ!!! みんなの向かう先はパスポートコントロール。 どけーっどくんじゃーっ!!! 往年のナリタブライアンを彷彿とさせる驚異の三角まくりでパスポートコントロールに到着。 「あなたは何時の飛行機!?」 偽「13:45!」 「私は12:30よ!」 至る所でこんな会話が繰り広げられているではないか。 一体何が起こったんじゃ? さらに走っていくと、案内板に我輩の乗る飛行機が30分遅れであることが表示されていた。 何とまたしても時空を歪めるミラクル炸裂。 無事間に合いそうだ。 もう息も切れまくってヒィヒィだが、乳酸で満ちてきた脳ミソに電撃が走った。 「お前はリーマンだろ! どうしよう。 時間が無くて買えなかったでごまかすか!? 走りすぎて狭くなった視野に「Guylian」の文字が飛び込んできた。 モヤモヤモヤ・・・ 「偽スナフキン、土産はGuylianのチョコでいいから・・・ ギリアン!! 走りながら箱を取り、タッチアンドゴーで1箱だけご購入。 あぁやっとゲートが見えてきた。 もう搭乗のご案内が始まっているぞ! 残った気合いでカウンターに駆け込む。 ハッ ヒッ のっ乗せて・・・ガクッ。 「ペラリーノオーバーブッキング。トラベルユアセルフ?」 オーバーブッキング!? 乗れないのか!? 「トラベルユアセルフ?」 個人旅行ってことか? 偽「イエスイエスマイセルフ」 すると女性職員は日本人の職員を連れてきた。 「個人旅行の方ですか?」 偽「イエス・・・あ、いや、はい」 「当機はオーバーブッキングとなっておりまして・・・」 乗れないのか!? 「搭乗便を変更していただける3名の方を探しております。 変更していただければ、700ユーロの当社金券をお渡しできますが・・・」 700ユーロ!!?? 700ユーロ×150円は・・・ え~とえ~と・・・10万円!!?? 金壱拾萬円也の金券を賜れるのですか!!?? あ~・・・う~ん・・・え~・・・いやぁ・・・。 偽「日本には何時に着くんですか・・・?」 「ソウル経由となりまして、日本には15:00到着となります」 関空15:00・・・。 そこから実家に寄って名○屋に帰って翌朝出勤・・・。 過密ローテだが・・・金壱拾萬円也とは・・・。 いや待てよ。 金券? ルフトハンザの金券? それをいつ使うんだ? どうせツアーじゃ使えないんだろ。 ・・・。 「いかがですか?さぁ!さぁさぁさぁ!!」 偽「あ、いや、え~と・・・う~ん・・・。 すいません。仕事があるんで(T_T)」 ビジネスマァーン ビジネスマァーン ジャーパニーィズー ビジネスマーン!!!(炎) 定刻に帰ります!! と、企業戦士魂に燃える我輩の選択がバッチョイだったことに、 間もなく気付かされることになるのだが・・・。 さっさと搭乗。 席はかつてない最悪な、真ん中の列のさらに真ん中。 隣はドイツ人親子だった。 ・・・。 狭い。 両側に人のいる空間は、いつにもまして狭く感じる。 ぐぬぬぬ・・・。 「本日は強風のため3本の滑走路のうち2本しか使えないため、 遅れましたことをお詫び致します」 どうでも良いから早く飛んでくれ。 この狭さは息が詰まる!! 走り疲れた上に劣悪な環境にゲンナリ極まる我輩を乗せ、 日本へ飛び立ったのである。 飯を食いジュースを飲み、翌日の出勤に備えて眠ろうとした時、 やはり金壱拾萬円也を選ぶべきだったことを思い知らされることになった。 ガキがゴネだしたのだ。 狭い上にこれでは眠れない。 その時、一列前の通路側に母親らしき人物が座っていることに気付いた。 オレって天才。 隣の親父に優しく語り掛ける。 偽「ご家族ですか?」 「イエス。これはマイサン、アンドあれはマイワイフ」 ギラッ 偽「奥さんと席を代わってあげましょうか?」 「・・・。ありがとう。それはとても嬉しい申し出だ」 そうだろっ! さぁ代われ!! 「しかし、彼女の前にはベビーベッドがあってね。 息子が寝てるから。あれをココには持ってこれないから。でもとてもありがとう」 偽「どういたしまして(T_T)」 「日本の方ですか?どちらにお住まいで?名○屋?それはどこに?真ん中? 私たちは京都に行きます。3ヵ月。えっ?京都の方でもあるんですか?ハー」 チキショウ。 お前の話なんて聞いてないよ。 あぁ飲み物が来た。 コーラくれ。 あーサンキュー。 ふぅ・・・気を取り直して本読みながら音楽でも聞くか。 バシャアッ うを。 なぜかオレのプレイヤーにスプライトが!? 「オーマイガッベリーソーリー。 ハウマッチイズイットハウマッチイズイット」 クソ親父がぁっ!! いや待て。 この旅でオレは優しく生まれ変われたハズだ。 何しにハイジやネロの故郷に行ったんだ! 偽「無問題無問題。心配しなさんな。 この通りケースに入っていたから大丈夫さ」 「本当に? 君は神様のように寛大な心を持った人だね」 そうだろうそうだろう。 良かったね、オレが神様で! メシが終わり、機内も暗くなって、 いよいよ我輩は翌日の出勤に備えるべく眠りにつこうとした。 時差ボケだけは避けたい。 Zzz・・・ ガンガンッ ガラガラガラッ おや、いつの間にか親父とガキのポジションが入れ替わっているぞ? ガンガンッ ガラガラガラッ ガキコラッ いやいやイカンイカン。 ここで我輩が怒り狂ったら、彼はひねくれてしまうかもしれん。 引きつりながらも笑顔でニッコリ。 何しろ我輩は神様のように寛大な心を持つ太陽王なのだから。 ガラガラガラッ パタン ヒューン バサーバサー ガンガンッ ガキコラッ!!(憤怒) 何じゃ。 オレはガキごときの笑顔にごまかされるような男じゃないぞ。 むしろオレの笑顔の方がかわゆいぐらいだからな。 なっ!? 貴様まさかそのよだれまみれの手でオレに触る気かっ!? それだけはご勘弁をお代官様! あっマジかっ!! アンギャーーーーッ
死 <完> この旅で立ち寄った世界遺産 |