~前回までのあらすじ
ナイロビを目指し、香港からインドはムンバイに到着した偽スナフキン。 キャセイパシフィックの係員がケニア航空のチェックインしてくれるというので、 パスポートと搭乗券を渡し、返してくれるのをロビーで待っております。
日が変わった。 インドは日本から3時間半遅れである。 時差3時間半って・・・。 半って何やねん。 この辺りにも、インドっぽさが表れている気がするのは気のせいか。 いつか、もっと強い人間になったら、色々見て回りたい国だ。 まぁそれは今回の旅には関係ない。 あまりに眠くなったので、22:30から少し寝て、25:50に起きた。 もうすぐパスポートを持ってきてくれるハズだが・・・。 そしてKQ203便のコールが掛かり、焦りだしてからしばらくして、 26:23、待望のパスポートと搭乗券が届けられた。 セキュリティチェックの後で、荷物の特定をして欲しいという。 何のことだろう。 パスポートを預ける時に、 何回か「君が預けたのはワンバッグだよな?」 と聞かれたのと何か関係が・・・? 言われた通りセキュリティを通過したが、何もない。 困って、さっきの係員が話をしていた兵隊に聞く。 偽「さっきの係員が荷物の特定をしてくれと言っていた」 「心配すんな。もうすぐ来る」 ホンマかいな。 しばらく待っていると、係員がやってきた。 「トランジットパッセンジャー?」 偽「うむ」 「あちらへ」 何だ? 全員が荷物の特定をするわけじゃないのか? なぜ我輩が選ばれたの?? ガラス戸の向こうで、係員が兵隊に説明をしている。 兵隊はいぶかしがって、なかなかO.K.をくれないようだ。 「オイお前。カバンに刺してあるお前のそれは何だ」 偽「カメラスタンド」 係員「そうだカメラスタンドだ」 首をかしげてはいたが、何とか通してくれた。 さっきもセキュリティで引っ掛かったし、こいつはカバンにしまっておいた方が良さそうだ。 同じ用で連れてこられた日本人女性と一緒に、荷物の集配所へ。 「君のはどれ?」 偽「これ。これがオレの」 あ。 一体どんな仕打ちを受けたのやら・・・。 これってバゲッジクレームに行けば良いんだっけ? 「名前は?パスポート見せて」 我輩は比較的簡単に済んだが、女性の方は少々てこずっていた。 後で事情を聞くと、あちらのカバンは行方不明になっていたそうだ。 同じくバンコクから乗ってきたらしい。 あなたのカバンも行方不明になってたんじゃないかとのこと。 ワンバッグと聞かれたのはそういうことだったのか? 言葉が分からないから、とにかく手探りだ。 こういう事態を乗り切れたのは奇跡に近い。 貴重な経験というか何というか・・・。 まだ着いてもいないのに、メチャクチャ疲れた。 頼むから普通に着かせてくれ。 搭乗機の到着が遅れて、乗ったのは4:10(インド時間)。 搭乗時には、兵隊が、手荷物にケニア航空のタグが付いているかチェックしていた。 タグを付けろと言っていたのはこれのことか。 我輩の後に続く皆の者、絶対タグは捨てないように。 さて、すでに1時間遅れ。 席は通路側。 こんな時間の便なのに、割に混んでいる。 離陸してすぐまたメシ。 昨日はスタバ以来ろくにメシを食っていないが、腹は減ってない。 外国に出ると腹が減らないのと便秘になるのはもう慣れっこだ。 間違って氷を入れてしまったので、リンゴジュースを慌てて飲み干し、 地球の歩き方でケニアのおさらいをして爆睡。 5:15(ケニア時間。日本時間翌11:15)、朝飯で起きた。 まだ着かねえ。 無駄に時間かかってんな。 今後のことを考えてしっかりメシを食い、記入例と全く違う入国カードを必死に書き、 到着の時を待つ。 そして・・・ついにその時は訪れた。
来たかナイロビ! 世界の危険都市ランキングでは、 いつもかなり上位にランキングする世界屈指の犯罪都市ナイロビ。 一体どんなところなのか、この目で見てやろうじゃないか。 こうしてケニア時間7:10(日本時間13:10)、我輩はナイロビに到着した。 何だか草原に滑走路を引いたような空港だが、東アフリカの玄関口である。 降りてすぐの土産屋でサファリハットを買おうか迷ったりしてるうちに、 イミグレーションには行列ができてしまった。 なかなか進まねぇ。 あまりに進まないので、現地の人のカウンターで入国審査を済ませた。 どうやら前の人々は就労ビザだったようだ。 あれだけ時間が掛かったのだから、 もう荷物はターンテーブルを何回転もしているのかと思ったら、 ここでもしばらく待たされ、ようやく空港を出たのは8:00前だった。 もうめんどくさいし、バゲッジクレームなどパスだ。 迎えに来てくれたのは現地係員のジャクソン。 ホテルはチェックアウトが10:00だから多分入れないけど、 とりあえず行ってみようということになった。 リコンファームはジャクソンの会社がしてくれることを何度も確認してから出発。 偽「車の中から写真を撮っても良い?窓を開けても?」 「良いYO」 偽「街中でも?」 「良いYO。でも、ポリスボックスと、ポリスメンは撮っちゃダメ。 そうなのか? 空港から市街地までは約30分。 視界には高層ビルが建ち並ぶ都会が広がってきた。 と、いきなりジャクソンが我輩のドアの鍵を閉め、 全てのドアの鍵をチェックした。 何となく緊張感が高まる。 偽「・・・安全になったんだよね?」 「うん。でもNE・・・」 そう。 彼らが言う「安全になった」とは、 「命までは獲られなくなった」ということ。 強盗やかっぱらいなど、「軽微」な犯罪は後を絶たないようだ。 「危なく感じたら、カメラは隠した方が良いYO」 ・・・。 それで間に合うんだろうか。 2010年、南アフリカワールドカップ。 おそらく日本の歴史史上最大の人数がアフリカの地を踏むだろう。 ただ、決してナメて行かないようにしていただきたいものだ。 日曜日で閑散とした市街地をクルクル走って、 ナイロビヒルトンホテルに着いた。 ホテルの正面に車で入るには、爆弾チェックがあり、 さらにホテルの入口では金属チェックまである。 さすがナイロビ。 やはりチェックインはできず、先にジラフセンターに行くことになった。 これは最初からツアーに組み込まれており、 どうやらチェックイン待ちの時間潰しの意味合いが強いようだ。
ケニアにはキリスト教の人が多いようで、道にはミサに向かう人、 ミサから帰る人が沢山歩いていた。 ジラフセンターまでは約30分。 ここではキリンに餌をやれるらしい。 別に自分で餌をやる気はなかったのだが、 係員が笑顔でやってきて「さぁやってくれ」 と言うのでは仕方ない。 円筒状に固められた餌を、手一杯に渡される。 「1コずつやってくれ」 ぐを。 近くで見るとやっぱりデカイ。
ぐわっ ベロベロするんぢゃない!! とっととノルマをこなすべく餌をくれてやると、 係員はまた餌を持ってきて「もっとやってくれ」 と言う。 またくれてやる。 のわっ! じっとしてろ! ちゃんとやるから! はぁ・・・終わった。 「さぁさぁ!」 わんこそば野郎か貴様は!! 「こうやるんだ」 左腕を頭の下から抱えるように回して頭を撫でながら餌をやる。 「彼はジニー」 ・・・。 お手本通り、頭を撫でながら餌をやる。 3回もやれば慣れたもの。 キリンの頭を撫でながら餌をやるなんて、 動物園の飼育係ですらやった事の無い人が多かろう。 「オレぐらいになると口移しするんだぜ!さぁカモン!!」 もう十分だ。 次の餌を持ってこられる前に退散。 入念に、ウェットティッシュで手を拭いた。 そら拭くっちゅうねん。 しばらく他の人が餌をやるのを見て、ジラフセンターを後にした。 帰り道、リクエスト通り、くるっと市内を回ってくれた。 何しろ歩いて回るだけの勇気は無い。 こいつは有名なモスクである。 「あの通りの向こうはダウンタウン。 あれが悪名高きナイロビのダウンタウンか。 地球の歩き方には、 いつどこで強盗や殺人が起こってもおかしくないとある。 ウーム。 ホテルに着いたのは10:30過ぎ。 まだ少し早かったが、チェックインできるらしい。 この後の予定は何も無く、かなり暇になってしまう。 我輩が希望した国立博物館は改装中だったので、 11:30からウォーキングサファリに行くことにした。 一旦解散、小休憩。 部屋は広く、かなり快適だ。 パスポートなどをセキュリティボックスに入れ、少しだけ休んで出発。 「駅が見たい」とリクエスト。 ちゃんと見せてからウォーキングサファリに向かってくれた。 駅といってもナイロビ発の列車は週3便のみ。 引込み線に朽ちた車輌が放置されていただけだ。 写真を撮りたいから車から降りても良いかと言ったら、かなり渋っていた。 車を寄せてやるから車内から撮れと言いたげだったが、 無視して降りて撮った。 生ゴミが散乱していることから見て、 もしかしたら車内には人が住んでいたのかもしれないな。 「昼ご飯は?」 偽「あんまり腹は減ってないから、世界のMで良いよ」 「オッケイ。世界のMはないけど、それに似たところに行こう」 そこはSTEERSというバーガーショップ。 ケニアシリングを持っていなかった我輩は、ジャクソンに借金して食った。 味はまぁまぁだった。 で、ウォーキングサファリはジラフセンターに行く途中にある。 ウォーキングサファリというぐらいだからどんなものが見れるのかと思ったら、 ただの動物園だった。 しかも動物も鳥もほとんど見えない。 何じゃこれは。 結局1時間ほど散歩しただけ。 これはオススメしない。 帰り道はまた少しドライブしてくれた。 遠くに見えるのはナイロビスラムである。 100万以上の人が暮らしているそうだ。 こいつは遊園地。 中には誰もいないようだった。 アパートとかマンション、病院など、 ほとんどの建物は塀に囲まれた中に建っていて、入口にはガッチリした鉄格子。 ここが異国の地だと再認識したドライブだった。 ホテルに帰ってきたのは13:30。 「じゃあ明日、8:45にロビーで待ってますYO」 偽「O.K. あ、ホテルの辺りを歩くぐらいなら大丈夫なんだよね?」 「タウンなら問題ない。 偽「まあね」 ・・・。 いるに決まってんだろ!! とりあえず部屋に戻って街を見下ろす。 ホントに歩いてるのは黒人ばかりだな。 そしてあの路地の向こうがダウンタウンか。 たくさん停まっているワゴン車は、 「マタツ」というバスとタクシーの中間のような乗り物である。 ウーム、何となくだが、カオスな香りが漂うな。 まだ14:00前だし、死ぬほどヒマだ。 あ、いや、死ぬよりはマシだが。 この旅で「死ぬほど」という表現はやめよう。 で、ジャクソンが安全だと言っていた「タウン」というのは、 ヒルトンホテルから南の一画。 官庁街になっていて、比較的安全そうな感じはする。 そこにあるコンファレンスセンターの展望台からは、 ナイロビ市内を一望できるという。 距離もヒルトンから500メートルぐらい。 日曜日でろくに買い物はできないし、行くならここに行きたい。 っていうか、何もせずにいられようか。 行こう。 ジャクソンの最後の言葉も気になるし、時計も外し、 入場料程度の金とカバンにカメラを入れて下に下りた。 ・・・が、いざホテルを出ようというところでやはり不安になって、 ロビーの人に聞いてみた。 偽「コンファレンスセンターに行きたいんだけど、この辺って危ないの?」 「タクシーで行きますか?」 偽「いや、歩きで」 「うーん・・・それなら、何も持たず、金も一杯持たずに行った方が良いですよ。 偽「あー・・・カメラを少々」 「うーん・・・手ぶらをオススメします」 偽「O.K.サンキュー」 やっぱ危ないんじゃねぇか!! カメラを置きに帰り、しかしせっかく行くのだから写真も撮りたいので、 ケニアでは使えなくて封印していた携帯電話を持っていく。 こいつも一応400万画素だからな。 デジカメの半分の能力もないが、海外用携帯のヘボ写真よりマシだ。 というわけで、少しの金と携帯だけ持って再出発。 さっきまでは車だったから相当に余裕だったが、メチャ緊張するぜ。 ハッキリ言って白人や東洋人はかなり目立つ。 歩いているとすぐ分かる。 それぐらい黒人ばかり。 こんな都会は初めてだ。 我輩も、当然注目の的。 そこで、我輩は必殺「携帯で電話中です作戦」を実行。 あくまで話をしているフリをして携帯を耳に当てているだけだが、 電話中の人間は襲われにくいと何かで読んだことがあるのだ。 周囲に気を張り巡らせながら、コンファレンスセンターまでテキパキ歩く。 どうやら裏口に回ってしまったようだが、ガードマンに事情を説明して入れてもらった。 ガードマンも怖いんですけど。 「インフォメーションに行って、てっぺんに行きたいと言えよ」 で、そのインフォメーション。 偽「てっぺんに行きたいんだけど」 女「4ドルね」 偽「はい」 女「どこから来たの?」 偽「日本」 女「ふーん。10ドル払って」 偽「は?」 女「ほら、とにかく4ドルは返すから。 地球の歩き方に書いてあった「入場料は客を見て決める」とはこれか・・・。 ムカつきながらポイッと払い、ドカドカとエレベーターに向かうと、 「待ちなさい」 と言われ、女がニコニコと案内し始めた。 どうやら自由に見せてはくれないようだ。 すれ違う客もガードマンやら女が案内していた。 といっても、2家族だけ。 普通展望台といえば、観光客であふれ返りそうなもんだが・・・。 こんな寂しい展望台は生まれて初めてだ。 てっぺんからは確かに街が一望できた。 「カメラ持ってきてないの?携帯がカメラなの? うるせぇ。 黙って見せろ。 四方の写真を撮ってさっさと退散。 彼女いわく工業地区。写真中央に駅がありますな。 かなりな都会でしょ。 偽「一緒に写真を撮ろうよ」 「モチロン良いわよ」 最後にしっかり詐欺野郎の写真を撮り、コンファレンスセンターを後にした。 正面玄関はメモリアル広場になっていて、こっちには観光客がいる。 ま・・・上の写真に写ってる観光客が全てだけど。 何人かは首からカメラを下げていたりしてたので、多少は安全なんだろうな。 しかし我輩がやったら、鴨がネギになる可能性が高いかもね・・・。 また携帯で電話中です作戦を実行しながらホテルに帰りつつ、街の写真を撮る。
フヌー。 緊張するぞ。 一体何をしてるんだろうか我輩は。 そういえば、お土産屋があったな・・・。 ポルトガルでお土産が買えなかったことを勘案し、買える時に買ってしまうことにしよう。 そう思ってヒルトンの角を曲がった時、タクの運ちゃんらしき男が声を掛けてきた。 「タクスィー?」 ハンドルを切るような仕草をしながら、満面の笑みである。 まぁしかし必要ないので、サラリとお断り。 「ノーセンキュー」 ・・・すると、断り方がまずかったのか、ヤツの顔がみるみる険しくなった。 失敗した! 慌てて半分駆け込むように土産物屋に逃げ込み、土産を買って、 おそるおそるヒルトンに帰ると、ヤツはまだ客引きをしていた。 そして我輩を見ると、 いきなりにらみつけてきた。 何なんですか一体。 これは怖い。 慌ててヒルトンに逃げ込み、結局事なきを得た。 精神的に疲れてしまって、グッタリ。 少し寝て、レストランで晩メシを食い、さっさと寝ることにした。 |