22 Shaw-
8:00少し前に起床。 む、イカン。
今日は8:30に迎えに来ると言っていたな。
あと30分しかない。
慌てて顔を洗い、朝飯を食ってロビーへ。
・・・。
一向に来ないではないか。
30分過ぎても来ない。
どこを探してもおらん。
さすがにこれはおかしいぞ。
ツアー会社の事務所に電話しても、誰も出ん。
これはまさか・・・!
イライラしながらホテルのロビーに戻ると、時計が目に入った。
・・・8:00?
むむむ???
我輩の時計では9:00だが。
偽「あ~、ほわったいむいずいっとなう?」
「(時計を指差して)エイト」
あれ。
何でやねん。
!
パラパラ・・・
やはりか!
ヨルダンとイスラエルとでは1時間時差があったのだ!
部屋の時計が遅れてるのかと思っていたぞ。
苦笑いとともに部屋に戻り、しばらく休んでから再びロビーへ。
「グッモーニン」
いたいた。
偽「グッモーニン。1時間間違っていたよ」
「あぁゴメンゴメン、不案内だったね」
歩いて旧市街へ行くのかと思ったら、車で移動。
まずはオリーブ山へ行くらしい。
オリーブ山は聖なる場所で、イエスはオリーブ山に住んでいたそうだ。
偽「眺めが良いらしいね」
「Yes、yes。まずそこへ行くよ」
観光バスの渋滞に巻き込まれながら、公園そばに路駐。
おぉ~っ旧市街が一望できるぞ!
この公園の脇に山を下りる道があり、
イエスはそんな道をロバで下ってエルサレムに行き、説教をしていたらしい。
こんな風にエルサレムの町を見ていたのかのぅと思いをはせてしまうよ。
なるほど・・・。
まさに世界的宗教の「るつぼ」というわけだ。
バチバチ写真を撮ったら今度は坂を下り、ゲッセマネの園。
「ここはイエスが捕まったところだ。教会はとても暗い。悲しみを表しているんだ」
ほうほう・・・って、草を売りに来る貴様はなんだ。
うっとおしいぞ!
「ファイブイズグゥッド」
こんなもん1シェケルで十分じゃ。
偽「ホレ1。どっか行け」
「う・・・」
教会の敷地内はオリーブらしき木が植えられていて美しいが、教会は確かに中が暗い。
イタリア・フランス旅行で簡単にイエスの生涯を説明したのを覚えているかな。
この園で、使徒の一人、イスカリオテのユダがイエスにキスをした。
それは、キスをした相手がイエスであることを意味し、
それを合図にイエスは逮捕されたのである。
何だかガイドが急ぐので、ササッと見て出発。
旧市街を囲む壁の近くに停め、旧市街へ。
「エルサレムには駐車場がない。あのバスの列をご覧。とても不便だ」
偽「すごい観光客だね。今はハイシーズン?」
「そうだね」
ふむ。
ガイドはてくてくと、嘆きの壁のチェックポイントの方に歩いていく。
何だかパレードのようなことをしていて、込み合っている。
説明がよく分からなかったが、15歳のユダヤ人をお祝いするのだとかなんとか。
観光客も多くてぐちゃぐちゃだ。
嘆きの壁なら昨日来たから、別に今行かなくても良いんだが・・・。
しばらく様子を見ていると、何だかえらい長蛇の列があり、
それは嘆きの壁とはまた別のチェックポイントの列らしい。
これは何だ・・・?と思っていたら、ガイドが何事か係員に話し掛け、
列の中にねじ込んでくれた。
むむむ、こいつは一体?
「良かった良かった。10:30までしか入れないんだ」
・・・どこに?
ぼーっと並んでいたら、列の行き先が分かった。
黄金のドームがある丘に入る長蛇だったのか。
嘆きの壁を見下ろしながら、専用の通路を上っていく。
偽「昨日ここへ来たよ。ユダヤの人は1日に何回祈るの?」
「3回」
偽「男しかいないよ?」
「男女の祈りの場は分けられている。女性の場所はこの下だよ」
と、足元を指差した。
そうなのか。
通路を抜けると、広場に出る。
神殿の丘。
イスラム教の聖地だ。
ここには岩のドームとアル・アクサモスクというモスリムにとってとても重要な建物がある。
キレイだ。
ものすごく青いんだな。
ここで、とても簡単にイスラム教の歴史とともに、
何でそんなに重要なのかをご説明しよう。
イスラム教の興りは、キリスト教やユダヤ教に比べると新しい。
7世紀、メッカにいたムハンマドは、
夢の中でガブリエルに導かれ、一夜にしてエルサレムに飛んで、
そこから天国に旅立ち、帰還してのち、イスラム教を広めた。
その時、天使ガブリエルに読めと言われたのがコーランである。
で、岩のドームというのは、ムハンマドが天国に旅立ち、
帰ってきた場所とされる「岩」を覆うために作られた。
だからドームの中には岩があるのだが、
現在、岩のドーム、アルアクサモスクともに、
モスリム以外の立ち入りは許されていない。
観光客が写真を撮ったりうるさくするので禁止されてしまったそうだ。
ハッとさせられるねぇ。
マナーを守らないとこうなっちゃうんだよ。
ちなみに、イスラム教は偶像崇拝を認めないので、写真には厳しい。
以前、スウェーデンで問題になったのを覚えている人はいるだろうか。
ムハンマドの風刺画を描いたというものだが、
そもそもイスラム教ではムハンマドの絵を描くこと自体が望ましいことではない、
ということが根本にあるのだ。
宗教の世界観はとても難しい。
そんなわけで、ドームもモスクも外から見るだけ。
覗いてみたが、岩は見えなかった。
「観光時間は終わりだー!出ろー!」
係員が怒鳴りながらやってきた。
なるほど、それで急がされていたのか。
帰りぎわ、しぶとくオリーブ山の写真を撮り、神殿の丘をあとにした。
獅子の門(旧市街を囲む壁の門)のあたりに出る。
このへんはモスリムの地区だ。
といいつつも、聖アンナ(聖母マリアの母)の教会があり、
区域の分け方は、イマイチよく分からない。
聖アンナの教会から進んでいくと、2つの教会がある。
ここが、ヴィアドロローサの、第二、第三のステーション。
ヴィアドロローサとは、ヘブライ語で悲しみの道という意味で、
イエスが死刑の宣告を受けてゴルゴタの丘で磔刑に処されるまで歩いた道のこと。
ここから、ゴルゴタの丘があったとされる聖墳墓教会まで、
14のステーションを経由して歩くのだ。
ちなみに第一ステーションは学校の校庭にあるらしい。
第二ステーションは、十字架を背負わされたところ。
第三ステーションは、あざけりを受けたところ。
教会のステンドグラスには、イエスをあざける人々が、
天井には、イエスにかぶせられた茨の冠が描かれている。
ここからまたしばらく歩き、モスリム地区のメインストリート沿いに
第四、第五ステーションがある。
第四は、イエスが最初に倒れたところ、
第五はマリアがイエスを見たところ。
と、こんな感じで、二回目に倒れたところとか
手をついたところがステーションになっているわけだ。
そして、第十ステーション以降は、昨日あえて入らなかった聖墳墓教会の中にある。
衣を剥がれ、磔にされ、刑に処された。
それがこの聖墳墓教会のある場所で行われたという。 我輩は全くクリスチャンではないが、鳥肌が立つではないか。
第十二 磔にされる。
第十三 ゴルゴタの丘
磔刑の場所から階段を下りたところに、死んだイエスに香油を塗ったという石がある。
これが最後の第十四ステーション。
クリスチャンの人々は、自分の数珠(数珠なのだ)を石に擦りつけ、キスをしていた。
教会の奥には、イエスの遺物を納めているとされる墓がある。
「まぁあれはモニュメントだ」
とはいえ、イエスの墓だからな。
黒板五郎の家じゃないからな。
墓の中に入れるようだが、あまりに長蛇だったので、明日早く来ることにした。
ここではねじ込めないんだな、さすがに。(笑)
これで午前中の観光は終了。
ランチタイムだ。
ヤッフォ門の近くにある、オシャレ過ぎるレストラン。
ガイドはジェントルマンだからご用達なのかと思ったら、初めて来たのだと。
そう、何ともジェントルマンなんだよなぁ。
このレストランで、ゆっくり話をした。
あまりに写真を撮るので、学生フォトグラファーだと思っていたらしい。
学生ねぇ。
まぁ完璧ではないにしても、レストランで外人と普通に英会話ができるようになったか。
これだけでも大きな成長だ。
観光一辺倒じゃなく、ゆっくり過ごせるようになれたことも、大きな成長だな。(笑)
さて、この後、イエスが生まれたベツレヘムという町に行くのだが、
ガイドはベツレヘムに行けないので、別のガイドが連れていってくれるらしい。
何で行けないのかは後ほど。
で、まだ時間があるので、我輩の観光魂を汲んで、
他の見所に連れていってくれるらしい。
旧市街が4つの部族区域に分かれているのは午前中に書いたが、
その中のユダヤ人地区にある、博物館を見学。
ユダヤ人地区は、中東戦争時に激しく破壊され、
今の町が昔とはいかに違うかがパネルになっている。
本当にユダヤ人地区だけが破壊されているのだ。
また、2000年前の住居の遺構があり、モザイクのきれいさに、最後まで模型だと思っていた。
博物館の出口は嘆きの壁に下りるチェックポイントのすぐそばにあり、
またちょっとだけ壁の広場へ。
今日も祈る人たち。
広場には沢山の兵隊がいて、何があるのか聞いてみたら、
訓練の修了式をやるらしい。
自分の聖書とライフルを受け取るのだそうだ。 この壁の近くは独特の空気が漂っていて、何となく来てしまうものがある。
壁の隙間には、願いが書かれた紙が沢山詰められている。
うーむ・・・。
広場の出口からガイドの車に戻り、鶏鳴教会へ。
イエスは逮捕される前に、弟子の一人、ペテロに言った。
「お前は鶏が鳴く前に、3回私のことを知らないと言うだろう」
で、イエスが逮捕された後、自分に火の粉が降り掛かるのを恐れたペテロは、
イエスを知らないと言ってしまう。
それに由来する教会で、イエスが逮捕された後、
連れて行かれた祭司カヤパの家の上に建つ、新しい教会だそうだ。
「地下にはイエスが捕まっていた牢獄があるから見てきなさい」
偽「はいはい」
てくてくズザザッ
ぐわぁをっ!!
階段踏み外して転落しかけたわ!
またしてもカメラにダメージを与えてしまうところだった。
多少怪我をしても、カメラだけは守らねば。
で、地下牢。
たまたまいた外国人観光客が教えてくれたが、見えるかね。
黒い人のような影が。
ここにつながれていたんだとさ。
ふーむ。
教会の外には石の階段があって、これは2000年前のものだそうだ。
もしそれが本当なら、イエスが歩いたのかねぇ。
さすがエルサレム、由来するものがありまくるな。
その教会から少し坂を上がったところに、もうひとつの教会がある。
そこの1階にはダビデのものとされる棺があり、
2階は、あの最後の晩餐が行われた部屋だという。
これがあの・・・。
ミラノで見た、あの絵が、空気が、ブワーッと思い出された。
いやぁ見ておいて良かったよ。(笑)
絵に比べると当然あっさりしているし、ここで本当に最後の晩餐があったかなんて分かりはしないが、
最後の晩餐だからな。
黒板五郎の家じゃないのが凄い。
あ、いや・・・黒板五郎の家とやたらに比較してるけど、別にけなしてるわけじゃないからね。
あそこぐらいしかロケ地に行ったことがないんだ、我輩は。(笑)
これで今日のエルサレム観光は終了。
別のガイドとイエスが生まれた町、ベツレヘムに向かう。
何で別のガイドかというと、ベツレヘムは、パレスチナ自治区にあるからだ。
彼はユダヤ人だから行けないということらしい。
「明日の夜は、23:50に迎えに行くから」
と、ジェントルマンガイドは去り、代わってタクシーがやってきた。
運ちゃんがガイドをするらしい。
「パスポートは持ってきているか?」
偽「うむ」
パレスチナ自治区というのは、ようは「国」。
日本はパレスチナを国として認めていないから自治区という言い方になるわけだ。
台湾みたいなもんだな。
だから、国境のようなゲートがあって、時にはパスポートコントロールがあるそうだ。
エルサレムから坂を下っていく。
エルサレムからベツレヘムに向かう道は、
なぜか渡航の是非を検討してください
という高めの危険度になっていたので(外務省渡航情報)、
どんな道なのかと思っていたら、景色は殺風景だが、整備された良い道である。
ゲートでは特にパスポートコントロールはなく、スンナリ通過。
ゲートにいたのは若い女の子のソルジャーで、少し意外だった。
パレスチナ自治区か・・・。
「この辺の家は、エルサレムと違ってぼろいだろ?
そうなのか・・・。
「イエスが生まれた時に、星がベツレヘムを指し、三人の博士がベツレヘムを訪れた。
そりゃあ、見たいかと言われれば見たいぞ。
教会は小さくて綺麗な、新しそうなもの。
さらりと見ただけ。
「このへんはベドウィンの町なんだ」
とか説明を聞きつつ、タクシーは走る。
で、何でベツレヘムに来たのかというと、聖誕教会というのがあるのですよ。
まさにイエスが生まれたとされるところにある教会なわけで、
実にでかくて立派。
ここに厩があったのかのぅ。
祭壇の地下には、生誕の地であるとされるところがあって、見学するには最強に並ばなければならい。
・・・が。
ガイドの取り計らいで、出口から逆回りで見学。
しっかり手を当てて祈ってきた。
この星の下が、イエスの生まれた厩のあったところとされているのだ。
インチキしたからご利益はなさそうだが。(苦笑)
これにてベツレヘム観光は終了。
タクシーの運ちゃんと話しながら、エルサレムに帰る。
チョー自由人な運ちゃんで、
毎晩ナンパしてニュータウンで水タバコを吸いながら
スポーツ観戦をして酒を飲むんだそうだ。
「偽スナフキンは酒もタバコもやらないのか。じゃあ今夜は女を誘って飲みに行こう。
お断わりします。
ホテルに着いたのは17:00過ぎ。
今日は色々回って疲れたし、まだ明日もある。
というわけで、おとなしく休ませていただいた。
Zzz・・・ |