1 Mayー
2:30、3:30と目を覚ましたが、どうせ4:00には目覚ましが鳴るのだからと 何度も寝ては目を覚ましを繰り返している間に、 4:00起床のつもりが、既に4:30。 イカーン! 何だオイ、目覚まし鳴ったか!? 飛び起きて適当に身仕度。 免許証、カメラ、三脚などを持って飛び出る。 そういえば、国際免許証について、何も書いてなかったな。 間違っている人が多いのだが、国際免許証というのは、 正しくは「日本の免許証を翻訳した」紙。 これ自体は免許証ではない。 だから、日本の免許証は、必ず携帯せねばならない。 ま、見られることはマレだろうけどね。 最近では翻訳サービスといって、国際免許証がなくても、レンタカー出来るサービスもあるようだ。 要は、国際免許証は所詮翻訳した紙だから、免許証を翻訳すればそんなもんいらんというわけ。 申し込む前に、よく見ておくと良かろう。 さて、話を戻す。 今朝は、朝焼けを見るのにオススメというグランドビューポイントへ行く。 これが思った以上に遠い。 東の空が次第に赤くなり、焦った我輩は、 もうこの辺にしようかと2回ほど道端の展望台に止まったが、 初志貫徹すべく、グランドビューポイントがあるらしき東へ東へ走り、 随分走って、ようやくグランドビューポイントに着いた。 次は撮影ポイントを決めねば。 ウロウロと歩き、ここかなぁという所に三脚を据えた。 ・・・。 ふむ。 右に張り出した枝が気に入らん。 見ると、一段斜面を下りた辺りが良さそうではないか。 じゃ、下りてみますか。 と、左足を下ろそうとしたまさにその瞬間、 思ったより斜面がキツく、我輩の短い足では届かないことに気付いたが、 時すでに遅し。 全体重を左足に乗せていた我輩は、そのまま為す術なく滑落。 背より高い斜面だったから、2メーターは滑り落ちたか。 最後にゴツッとカメラをぶつけて止まった。 グハッ!!(痛) 「アーユーオーケイッ?」 偽「ヤー、ノープロブレム」 慌ててレンズや液晶を見たが、奇跡的に無傷だった。 しかし痛ぇッ!! 膝がッ!! ぐぬぬぬ・・・ッ。 しかし武士は食わねど高楊枝。 痛くないフリをして、少し違うポイントに移動。 日が昇っちまう!! くーっ痛ェッ!! ちっこんな時に三脚を持つ手がべたつくのは何ぞ・・・。 うわぉっ!! スゲェ血がッ!? 何じゃこりゃ~ッ!! 左手の小指の皮がペロンとイッていた。 慌ててハンカチを握り、しかしまだ写真を撮る気な我輩は、三脚を据えた。 最初からココにすりゃ良かったというグッドポジションだ。 ・・・。 チキショウッ痛ぇッ!! まぁしかし今はそんなこと無視だ。 しばらくして朝日が昇った。 おー・・・まさにサンライズ。 しかし我輩の被写体は太陽じゃない。 朝日に映える岩壁だ。 ふむ~。 そんなにいうほどでも・・・。 ぬぅ~立ってると痛すぎる。 座ってマッサージ・・・も出来ん。 ズボンをまくるとエグそうだから、見ないでおこう・・・。 結局そのままの姿勢でしばらく待ち、 さらに崖際まで攻めた結果、 多少日が昇ってからの方が美しいのではないかと我輩は思った。 リムの下の方まで光が指した方がキレイだと思う人もいるだろう。 ま、この辺は好みの問題だ。 氷点下の中、しばらくグランドビューポイントに居座ってから、 ふと思い付き、グランドビューポイントからさらに東にある、リパンポイントへ。 モチロン明日の朝焼けのロケハンだ。 リパンポイントはグランドビューからさらに15分。 かなり遠かった。 が、眼下をコロラド川が雄大に流れ、 且つ何となく朝焼けに適したロケーションに思われた。 明日はここだな。 と、決めた時には既に8:00前。 腹が減ったが、天気が良い時は写真が優先。 まずは日が昇ったグランドビューポイントを再び訪れ、 朝飯はマーザポイントなどをブラついてからだ。 昨日とは全然違う眺めだな。 やはり足繁く通ってみないと分からん違いがあるものだ。 無駄に納得してからスーパーへ行き、 オレオとアーモンドが練り込んであるチョコスティック、ミルクコーヒーと水を購入。 オレオとミルクコーヒーで朝飯。 ふむ、美味い。 さて、今日は1日グランドキャニオンを堪能する予定だ。 先を急いでも良かったのだが、せっかくのグランドキャニオン。 少し深く見ていこうと思ったのである。 なんでも、リムに下りるトレッキングが人気らしい。 その中で、一番メジャーなブライトロッジトレイルへ行ってみることにする。 グランドキャニオンを今も削り続けているコロラド川を見下ろす展望台「プラトーポイント」、 そして、コロラド川と同じ高さにある(要は谷底)「ファントムランチ」へ至るトレイルである。 これまでの遠景写真に、実は何度も登場している。 今一度、ご覧いただこう。
谷底はクソ暑く(40℃を超えることもあるらしい)、 体力の消耗が著しいことから、毎年死者が出ており、 谷底までの往復は禁止されているという。 まぁもちろんそんなとこまで行く気はない。 足も痛いし、1.5マイルの休憩所まで行って、帰ってこよう。 水を沢山持てとあるから、さっきわざわざ水を買ったが、カバンに入らない。 まぁ1.5マイルだから、昨日買った小さい方(350mlペットボトル)で良いか。 それに、こんなに寒いのだ。 今朝見た気温掲示には、谷底の最高気温22℃とあったし。 汗なんてかかない可能性すらある。 さ、行くべ。 まるで脅しのようにいくつもいくつもある、 自己責任でよろしく!と書かれている注意書きを読みつつ、 10:00、ブライトロッジトレイルへ。 谷を下りてしばらく、下からロバに乗った一団が登ってくるのが見えた。 歩く他にロバに乗るツアーがあるらしいから、それだな。 ふと思い付き、坂のカーブとバックのグランドキャニオンのバランスを決め、一団を待つ。 おっ、先頭の人がカッコイイぞ。 蹄の音のリズムをとって、右手前を出した瞬間に、激写ッ!! ほぼ完璧。 カメラ目線じゃないし、ロバが目をつぶってないし、背景とのバランスも不満なし。 しかし! 右前足が切れちまったよ。(T_T) その時は非常にガッカリしたが、今見直すと、良い感じ。(笑) さて、どんどん下りていく。 景色良いなぁ。 それにしても、登ってくる人はみんなヒィヒィだな。 せっかくだから景色見れば良いのに。 バチコンバチコンッ。 そして、1.5マイルの休憩所へは、1時間足らずで到着。 意外に早いな。 そして思ったより楽だ。 まだ早いしなってことで、3.0マイルの休憩所まで行くことにした。 しかし、まだ我輩は知らなかった。 この先に待ち受ける地獄を。 同じようなつづら折りの道を下りに下り、3.0マイルにもあっさり着いた。 ここまで2時間弱。 何だ意外に容易いな。 そして気温も涼しくて良い感じだ。 ん~、しかしあまり景色は変わらないし、この辺で引き返すか。 と、思った我輩に、とある日本人女が声を掛けてきた。 「どこまで下りるんですか?」 偽「いや~景色変わらないし、引き返そうかなぁと」 「もうちょっと下りてみませんか?」 偽「ん~しかし谷を抜けるまで行かないと視界が広がらなさそうだし、 「坂が緩やかになるから、意外に早いかもしれないですよ」 ふむ、なら行ってみるか。 女はフラッグスタッフからバスで来たらしく、18:00のバスで帰るらしい。 我輩も夕焼けが見たいので、それぐらいには戻りたい。 というわけで、さらに下ることになった。 相変わらず気温は良い感じだ。 暑くもなく寒くもない。 むしろ、下りてみるのに良いチャンスなんじゃないか?と、思ったわけだ。 次のポイントは4.5マイルの所にあるインディアンガーデン。 道は緩やかになり、喋りながら下りたら、また1時間足らずだった。 振り返ると、サウスリムがそびえたっている。 インディアンガーデンは木が茂っていて少し視界が悪かったので、ちょっとだけ進んでみる。 すると、360度視界が開けて、 今まで見下ろしてきたリムが目の前に壁のようにそそり立ち、素晴らしい眺めだった。 そしてその視界の中に・・・ 朝から何度も見下ろしてきた、プラトーポイントが。 何だもうすぐそこじゃないか。 「私はこの辺で引き返します。行ってみても良いと思いますよ」 偽「ウーム・・・」 我輩は悩んだ。 道は平坦だ。 ただ、あのすぐ先にプラトーポイントがあるのか? 行ってみたら、いやいやまだまだとグランドキャニオンが言い出しても困る。 しかし、むざむざ目の前にあるのに・・・。 ぐぬーッ。 「どうします?」 偽「せっかくだから行ってきます」 あぁまたしても旅の出会いより旅をとった偽スナフキン。 愚かなり。 愚かなり偽スナフキン。 すれ違った人に聞くと、リアルフラットで、30分も歩けばプラトーポイントだという。 なら行くだろ。 道は見た通りフラット。 眺めは、見渡す限りのリムだらけ。 てくてく歩き、プラトーポイントに到着。 コロラド川を遥か下に臨む展望台でひと休み。 そして柵の裏に回って写真を撮り、 崖際に座って、持ってきたチョコスティックを食ってる時、 急に今朝のことを思い出し、途端に怖くなった。 足がすくむとはこのことか! やべぇ怖いッ!! 慌てて足を滑らせたら今度は死ぬので、落ち着け落ち着けと言い聞かせて展望台に戻った。 ぶふぅ~ッ オレは何をしてるんだ。 やれやれとひと休みしながら写真を撮り、 日本人と話をし、帰る時間が気になったので、15分程度の滞在でプラトーポイントを後にした。 4時間ぐらいあれば帰れるかな~。 てくてくとインディアンガーデンまで戻ると、空が曇り始めた。 む。 まさか雨とかじゃないよな。 雨は良いけど、いや良くないけど、 雷だけはマジで勘弁してくれよ。 カメラが雨に濡れるならまだしも、 カメラ3台持って、隠れる場所が全くないトレイル。 オレに落ちてくれと言わんばかりではないか。 自然と速まる足。 しかし、来た時は楽だった道がツライ。 何だこれは。 こんなのがあと4時間か? ・・・。 しかし歩かねば帰れない。 黙々と歩く。 休みたいが、雷が怖いので、早く帰りたい。 しかしツライ。 段々悪循環に陥っているのに気付いた。 インディアンガーデンから3.0マイルの休憩所まで、約1時間。 水を補給しつつひと休み。 あと2時間半か・・・? 足が痛いぞ。 しかしそれにも増して、我輩は急激に腹が減ってきたのだった。 これはイカン。 早く帰ろう。 途中、高山病のようになってしまっている男性を女性が助けていた。 我輩も何かしようと思ったが、自分のことで精一杯。 大丈夫だからと言うので、またえっちらおっちら坂を登っていく。 最初のうちはゆっくりながらも止まらずに歩けたのに、 ふと疲れて立ち止まってからというもの、 少し登ったら止まらずにはいられなくなった。 何て自分に甘いのかと腹が立ったが、 その気力さえ惜しいぐらいにヤバさを感じてきた。 1時間程度で1.5マイル休憩所に到着。 アカン、腹が減ってたまらん。 すれ違う人に、菓子が余ってたらくれと言いたくて仕方ないが、 我が羞恥心がそれを許さない。 それに、みんな自分に必要な分を持ってきているのだ。 何の準備もなくやってきた我輩が、それを奪ってはならない。 水を1リットル半ほど飲んで、何とか空腹を満たそうと試みたが、 空きっ腹が水で満たされて気持ち悪くなってしまった。 ナメ過ぎた。 過信した。 大体、先に下って後で登る登山自体初めてなのだから、 もっと慎重に構えるべきであった。 インディアンガーデンで潔く引き返した女の子に着いて帰るべきだったのか。 結構限界がきて、坂道に座り込み、目を閉じたら、ウトウト眠くなった。 そういや昨日あんまり寝てないな。 風が冷たく、頭がスーッとした。 あとちょいなんだから・・・。 と、また少し登ったが、つづら折りを2つ曲がったところで、 また座ったら腹が減って目が回る思いがした。 ・・・。 腹が減って動けなくなるのはトルネコだけだと思ってたよ。 ちょっと休むか・・・とまた目をつぶっていたら、声を掛けられた。 「アーユーオーケイ?」 見ると、パークレンジャーのワッペンを着けた男がにこやかに立っていた。 偽「ヤー」 早くさっきの高山病の人のところへ行ってやってくれよ。 しかし、どうも顔がヤバかったのか、男は我輩を心配して去ろうとしない。 「水はある?」 偽「イナフ。Butハラヘリヘリハラ」 「おぅメシクッテナイ?何時から歩いてるの?テン?ランチも食べてないの!? レンジャーは、お菓子を2袋くれた。 偽「サンキューソーマッチ・・・」 「あと少しだから頑張って!」 そう言って、レンジャーはにこやかに去った。 何とも無様だ・・・。 人様に迷惑を掛けてしまった原因が、 己の過信だったことを悔いながら、お菓子を平らげた。 もう疲れたなんて言えないぞ。 ゆっくりとまた坂を登っていくと、曇り空が晴れて、リムが光っていた。 気分を紛らわすために写真を撮りつつ坂を登ることしばらく、 やっとスタート地点のロッジが見えた。 はぁぁぁ・・・着いたやんけ・・・。 そして最後、ロッジの近くでコンドルを見つけ、 プラトーポイントにいた日本人と写真撮影。 くっそー、ここは70-300ミリの望遠で撮りたいが、 出発前にキヤノンサービスセンターにセンサークリーニングに出したら、 完ッ璧にキレイにしてくれたのだ。 そうなっちまうと、今度はレンズ交換でゴミを入れたくない。(苦笑) 本末転倒だが、ここはトリミングで引き延ばそう。 また空が曇って、風が吹いてきた。 これは飛びそうだ。 でりゃっ!! あぁ・・・気合い入れすぎてブレちまったい・・・。 いやいや、そんなことより早く休みたい。 そして18:00、我輩はやっとサウスリムに戻った。 概ね所要時間9~12時間のところを、7時間半で帰ってきたわけだ。 まぁその代償は大きかったが。 足が痛すぎる。 雪が降ってきた。 寒いわけだ。 車に戻り、ひと休み。 疲れ過ぎたので、今夜の夕焼けはウエストリムまで行かずに、マーザポイントにしよう。 天気も良くなさそうだし。 あまり休み過ぎると足が固まりそうだったので、散歩しながらクールダウン。 意外と晴れて良い天気になったマーザポイントで夕焼けを撮り、 今夜はグランドキャニオン内のロッジでディナービュッフェ。 パスタを食いつつ、今日の反省。 帰りが曇り空で良かった。 あれが暑かったら、真面目にヤバかった。 みんなトレッキング用に着替えているのに、1人だけジーパン。 菓子は無いのにカメラが3台。 油断大敵。 胸に刻んでホテルに帰り、帰った途端に爆睡した。 Zzz・・・ 本日の走行距離 80.7マイル |
第一話 ひまつぶし 第二話 右側通行 第三話 トルネコのように |