旅だ。
旅らば、旅り給ふ、旅る、旅る時、旅るれば、旅れ、旅ろう。 これぞT高古典の西田お得意の必殺五段活用。 やっとまたこの時がやってきた。 下らない日常から抜け出し、 世捨て人となる時が! 今回の行き先はアイスランド。 言わずと知れた、極北の孤島だ。 なぜにアイスランドかと聞かれたわけではないが、あえて答えよう。 何? 聞きたくないだと? ワッハッハッ。 聞きたい時は素直に聞きたいと言い給へワトソン君。 聞きたいんだろ? 仕方ないから教えてやろう。 何故にアイスランドか。 それはNorthern Lights・・・いわゆるひとつのオーロラを見るためだ。 オーロラをもってすれば、我輩の心にディープインパクトを与えてくれること間違いなし。 そして知っておけ下賤の者ども。 英語では「ノーザンライツ」と言うのだ。 オーロラよりも、こっちの方が確実に通じるぞ。 まぁそれは良いとして。 ではまず、アイスランドについて語ろう。 早く本編に行け? そうはいくか。 しっかり聞いてもらうぞ。 オホン。 アイスランドがどこにあるか、皆の衆は正確にご存知であろうか。 アイスランドはここだ。 そもそも我輩がアイスランドという国を知ったきっかけは、 DVDレコーダーを買い、手当たり次第に自然番組を録画していた時、 たまたま地球大自然紀行でアイスランドをやっていたのだ。 たいがい早送りで"はしょる"のだが、島人である我輩は、食い入るように2、3回観た。 そしてそれも忘れた頃の、スペイン旅行の帰り。 トランジットのアムステルダムでアイスランド航空機を見、 さらに追い打ちをかけるかのような雑誌のアイスランド特集。 アイスランドへの思いは募り、何とか行く機会はないものかと思っていたのだ。 で、今回。 オーロラの見れる所を調べていると、 アイスランドの文字が。 これぞ神の思し召しではなかろうか。 さっそくアイスランドについて調べると、興味深いことが次々と明らかになった。 島の名前と緯度から極寒の島と思われがちだが、島の周囲を暖流に囲まれているため、 同緯度の国々に比べて非常に暖かい。
日本でいうと秋田市ぐらいの気温らしい。 そして火山の島で温泉湧きまくり。 実はオーロラ観測ができる場所の中では、 最も暖かい魅惑のバカンスアイランドだというのである。 よって、深夜のオーロラ観測で一番粘れるのがアイスランドなのだ。 さらにそれだけではない。 他の観測地として有名な観光地は、 基本的に豪雪地帯でかつ僻地にあるため、オーロラ以外何もない。 するとどうなるか。 オーロラが見えないと、 もはやふて寝するしかなくなるのである。 しかしアイスランドは前述の通り暖かく、 しっかり観光もできちゃうのだ。 確かにスノーモービルで走り回るのも楽しいかもしれん。 しかし我輩は、世界遺産や外国ならではの圧倒的な大自然も見たいのだ。 そこで、冬でもしっかり観光ができ、 オーロラも見れちまうアイスランドをチョイスすることになっちゃったのである。 二兎追う者は一兎も得ずと言うが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。 二兎追わない者が、
お、これカッコイイ言い回し。 くじけそうなお子さんを持つ親御さん。 使っても良いよ。 でも権利は我輩にあるからね。 二兎追わない者が、二兎を得る権利はないのだ!R って最後に「R」を付けてくれなきゃやーよ。 と、長い前ふりになったが、これが今回の行き先決定に至るお話だ。 で、行き先を決めたは良いものの、困ったことにアイスランド行きのツアーは極めて少ない。 加えて、最短行程6日と、休みの短いリーマンには使いづらいのである。 さらに情報が少ない。 アイスランドについては、名著地球の歩き方ですら、 1000ページ以上あるヨーロッパ編の内の12ページ程度しか割いていない。 しかも最後の最後、ともすれば目次と間違ってしまいそうな配置だ。 あぁ哀れやアイスランド。 ではあきらめるかといえば、あきらめるわけがない。 行くといったら行くんだ! さっそくHISに問い合わせたところ、何とかなることが判明。 人生初のパックツアーでない海外旅行へ行く決断を下した。 セントレア→成田→ロンドンの往復券とロンドン→アイスランド・レイキャビクの往復券、 ツアーとホテルの予約を各個撃破し、 ホテルまでの移動手段もホテルとツアー会社にメールで確認。 情報面も、薄いながらもしっかりしたガイドを通販で取り寄せた。 何だかんだでようやく準備が整ったと思ったら 今度は旅行保険に加入し忘れていたりしてかなりバタつき、 パックツアーの素晴らしさを改めて思い知らされた。 しかし、スイスの鉄道切符購入と同様、 成し遂げた時の感動が素晴らしいものであることを信じて、出発前日を迎えたのである。 明日の行程は、まずセントレア8:30発で成田国際空港へ。 成田からはロンドン・ヒースローに飛び、 さらに乗り継いで最終目的地アイスランド・レイキャビク到着は、現地時間23:35。 15時間だしそんなもんかと思っていたのだが、前日になって時差のことを思い出した。 東京~レイキャビクの時差は9時間。 ということは、到着時刻は日本時間32:35。 つまり翌日8:35着。 丸一日か・・・。 さすがに遠いな。 セントレアに6:30着とするには、5:00には起きなければならない。 現地到着時刻は前述の通り日本時間で翌8:35。 ホテルまでは1時間と聞いているし、それからオーロラ観測のナイトウォークとなると、 まるっと30時間以上起きることになる。 そこまで魂を燃やすと、スペインの経験からして、 頭痛を伴う眠気に襲われることになる。 これは綿密な時差対策を講じる必要があると判断。 名付けて「時差ボケ対策プログラム」、 略して「時差対P」を発動。 出発前夜は0:00に寝て、当日は5:00起き。 多少眠気を残しておいて、ロンドンへの機内でさらに5時間の睡眠をとり、 連続活動時間を適当に区切るという、 綿密な時間スケジュールでオーロラに挑むこととした。 で、迎えた2月8日。 予定通り5:00起床。 荷物を整え、玄関を出たらすでにギリ。 何でやねんと! 綿密なスケジュール、早くも敗れる。 予定していた電車に乗り遅れ、 前日に指定席を予約した特急が目の前を通過していった。 しかもその指定席は、一旦6:30発を予約したのに、 わざわざもう一度6:02発を取り直したものだったので、 我が怒りもそれ相応。 ギリギリギリ・・・。(←歯ぎしりの音) やむなく後発の電車でセントレアへ向かった。 座れたものの、やたらに狭い空間にまたしても歯ぎしりを繰り返し、 セントレアには6:44着。 旅行社カウンターへ行き、さっそくeチケットなるものを受け取ろうとしたら、 我輩が手にしていた物がそのeチケットだった。 冊子みたいな控えがいらなくなったのか。 素晴らしいことだ。 しかも紛失しても、その場で再発行可能らしい。 重ね重ね素晴らしいことだ。 帰りの航空券の控えを持ち歩くという、あの危険極まりない行為がなくなるだけでも、 相当ありがたいことである。 ・・・しかしだね。 カウンターでチケットをもらうように、手紙にわざわざ書いてあるんだがな。 HISの人、途中で担当者が転勤してからというもの、その後任が何とも頼りない。 何か聞いても的外れな答えをよこすので、心配していたのだ。 飛行機と宿は大丈夫なんだろうな・・・。 先が思いやられるが、とりあえずJALのチェックインカウンターに行くことにした。 さて、機内預けの荷物をどうするか。 というのも、こちらは頼りがいのあるアイスランド航空の方から、 ヒースロー空港では荷物がなくなりやすいので、 レイキャビクまで直送せず、ロンドンで一旦受け取った方が良いと言われていた。 結局決めかねたまま、ここまで来てしまったのだ。 確かにテロ未遂以降、手続きがややこしくなっていることは噂に聞いている。 で、JALの人いわく、ヒースローで一旦荷物を受け取ることにした場合、 UKに一度入国し、税関を通り、 またチェックインの後出国手続きをすることになるという。 それもまた面倒だ。 そして予定ではトランジットには5時間あるが、 前回のフランクフルトのこともある。 レイキャビクに行けなくなってしまっては元も子もない。 一応トランクを紛失しても旅を続けられるように、 手荷物はしっかり持ってきたし、服も余分に着込んできた。 結局、荷物はレイキャビクまで直接送ってもらうことにした。 さらばトランク。 またレイキャビクで会おう。 レイキャビクまで来てね!! ホントに来てね!! トランクと別れ、保安検査をパスし、いつものごとくスタバへ。 国外に出るまでにまだ成田に立ち寄るので、 いつもの儀式であるホットココアとチョコチャンクスコーンは後にして、 カフェミストとマロンディッシュを食う。 ・・・はぁ~♪ いつもなら出勤時間。 セントレアでひと息ついているなんてステキ♪ もう会社になんて戻りたくなくなるね。 8:15、JAL54便成田国際空港行きに搭乗。 20Kはまた羽根の上。 って何コレ。
オットマンから背もたれまでフルオートかいな。 しかも寝れるんちゃうかコレ。 こりゃスゲエ。 さっそくくつろいでいると、 この機は足元に荷物が置けないから棚に上げてくれだの、 シートベルトのサインが消えるまでデジカメを使うなだのと色々言われた。 ゴチャゴチャ制約が多いんだのぅ。 デジカメぐらいいつだって使えるように改良してくれよ。 そうこうしているうちに飛行機は動きだした。
ポーン。
を。 行くのか!? やっぱり最初の離陸は少し緊張するな。 よーし行ってくれー! 8:46離陸。 雲一つない快晴。 山と地平線がキレイだ。 成田までは50分。 一瞬だな。 富士山を見たり、 座席をフルフラットにして遊んでいるうちに、9:25成田着。 滑走路をグリグリ走っていくうちに眠くなったが、 時差対P上、今寝るわけにはイカン。 もう少し辛抱してくれ。 到着後30分ほど待たされて、ようやく降りれた。 次は、12:00発JAL401便ロンドン・ヒースロー行き。 成田というぐらいだから店を見て時間を潰せるかと思ったら、 トランジットの保安検査の外にはろくに店もなく、肝心なスタバも無いので、 ココアジュースとポッキーで出陣の儀式を執り行う。 ♪人間五十年~ポリッ ぶぉ~っぶぉ~っゴクゴク・・・ いざ行かん決戦の地!! さぁ気分が高まってきた。 きたぞ、奥歯で物を噛むようなこの感覚! いよいよ外国に行くのだ! 12:00搭乗。 やはり羽根の上・・・って狭ぇっ!! さっきのを国際線に導入しろよ!! しかも厚着だからいつもより狭く感じるぞ。 ゴソゴソしているうちに、早くも動きだした。 さぁ行くぞ癒しの旅へ!! 我が心にディープインパクトを!! アムロ・レイ、 ヒアウィゴーッ!!!
ぐわぁああぁん・・・。
こうして12:30、JAL401便は大空高く飛び立ったのである。 あー眠い。 真剣と書いてマジと読ませるぐらい眠い。 しかし我が時差対Pによると、まだ寝てはならない。 17:00、つまり現地時間8:00ぐらいから5時間ほど眠る予定である。 ということは、まだ5時間ぐらいは我慢せねばならんわけだ。 父親たちの星条旗を観ながら17:00を待つ。 早く寝たい。 昼飯は鶏肉。 決して美味くはない。 メシが終わり、映画が終わっても日本時間15:10。 ロンドンまではまだ9時間以上残されていた。 時差対Pの睡眠タイムまでにも、まだ2時間近く残されている。 いつものことだが、あたしても中だるみ時間がやってきた。 これがツライ。 気晴らしに景色を見ると、素晴らしい快晴である。 が・・・こちら側の席は日が当たりまくるので暑い。 若干汗ばんできた。 くそぅ・・・不快だ。 映画も特に観たいものが搭載されておらず、どうしてもやることがなくなったので、 たまらず寝てしまうことにした。 3時間ほど眠り、日本時間18:00起床。 早くも日が沈みかけているのかと思いきや、 西に沈んだはずのお日様が不死鳥の如く甦ってきた。 この時期、ロンドンの日の出時刻は10:00過ぎ。 あちらではこれから日の出なのである。 ウーム、恐るべきは時差ということか。 恐るべきといえば、今日はずっと晴れている。 こんなにずっと景色が見えるのは初めてのことだぞ。 さすがは太陽王と言いたいところだが、 オーロラの前に力を使いきってしまいそうでもったいない。 今のうちにまとめて曇っておいていただきたい。 景色を眺めていると、入国カードが配られた。 ロンドンのトランジットは5時間ほどある予定なので、 一旦出国しようかとさっきから悩んでいたところである。 スッチーいわく、普通に出国して、 アイスランド航空で再チェックインすれば良いとのこと。 しかし、本当に知っているのか疑わしいぐらい何とも歯切れの悪い口調だったので、 後で空港の人に聞いてから出国するかどうかの最終決定をすることにした。 さて、お隣さんはどうやら初海外旅行だな。 付箋だらけの地球の歩き方と、一生懸命にトランジットや会話を予習している姿が、 かつての自分にそっくりだ。 それに比べて、見よ! この落ち着き払って景色を眺める我輩の余裕っぷりを!! 何ともたくましく育ったものだ。 まぁしかしスッチーにトランジット出国の方法を懸命に聞いているわけで、 全てが余裕というではないがね。 旅とは常にチャレンジと勉強の連続である。 さてと・・・出国すると決めたからには、本気にならねばならん。 7月24日通りのクリスマスを観ながら、ロンドンの予習をする。 ・・・む。この映画オモロイな。 結局予習そっちのけでハマっているとメシが出てきた。 メシを食いつつ、前述のお隣さんと談笑。 何と初めて飛行機に乗るのに、いきなりスペインでゴザルか!? ・・・やるな。 ちょっと負けた気がする。 ほんのちょっとだけな。 2、3スペインの話をして、また映画に集中。 外はまた夜が明け、2月8日が始まった。 休みが1日増えた感じでとてもありがたい。 映画が終わり、本を少し読んだところで眠気がきたので、1時間弱の睡眠。 これで時差対Pは完璧だ。 ロンドンまであと1時間。 現地時間15:45着で、アイスランド行きは20:30発。 5時間あるにはあるが、2時間前には空港に戻ってこなければならないし、 空港を出るのにも1時間はかかるだろう。 ホントに空港から出られるのか確認するだけにして、 出国するのはやめておくか。 何やかんやと迷っているうちに、日本時間24:41、現地時間15:41、 ロンドン・ヒースロー国際空港に到着。 Good evening、UKの皆さま!! またお会いしましたNE! やー、盛り上がるなぁ。 しかも太陽王の到着で、雨模様の天気は一気に晴れてきた。 一旦は出国を断念したものの、やはり出たくてウズウズしてきた。 日本人スタッフが一人ぐらいいるだろうと飛行機を降りて 入国審査まで行ったが一人も見当たらず、やむなく外人スタッフに質問。 偽「最終目的地はレイキャビクなんだけどね、街に行きたいんだよ。出れる?」 「Yeah。ゴーオーバーゼア」 と、入国審査を指差した。 出れるのか・・・。 ウーム。 10分近くウロウロしながら迷った結果、やはりやめることにした。 まずはレイキャビクに集中すべきだろう。 日本人ツアー客で破裂しそうなバスに乗り、ターミナル1へ向かう。 学校だか何だかの女の団体を、キザなヤローが案内してやがる。 何でそんなDJ口調やねん。 あ゙~そしてピーチクパーチクじゃかましいっ!! ターミナルに到着するや、 我輩はこいつらとは無関係である! というオーラを全身から発しながら保安検査へ。 グズグズしてたせいで恐るべき行列になっていた。 靴を脱がされボディチェックを受けて、 ようやくアイスランド航空のチェックインが終わったのは、 到着から1時間半も経った17:30ちょい前だった。 出国しなくて正解だったな。 アイスランド行きまでは3時間近くあるのでお買物。 さすがはヒースロー。 腐るほど店がある。 我輩の用事がある店は少ないが、無いよりはあった方が良い。 で、バーバリーを覗いた時、傘を忘れたことに気付いた。 コレがまたどこにも売ってなくて、 ようやく見つけた折り畳み傘は8.5ポンド(約2,300円)もした。 痛い出費だ。 さて・・・ひと段落したところで座りたくなってきた。 元々重すぎるカバンに、トランク紛失対策として乾電池をやたらに持参、 さらに服もパーカー、セーター、とっくりセーター、 シャツと4枚も着込んできた上にダウンジャケットを着ているので、暑くて大変。 カフェで脱ぎに脱ぎ放熱、休憩する。 ぷはーっ。 かつてはカフェにすら行けなかったのに、 今や冷えたカフェオレをゆっくり飲む我輩。 うーむ、やはり成長著しいな。 19:45(日本時間28:45)まで時間を潰し、GATE40へ歩きだす。 プロペラ機を覚悟していたのだが、結構大きい機体だ。 そして20:40(日本時間29:40)、 ようやくアイスランド航空455便、ケプラビーク国際空港行きに搭乗。 確保した窓側に座る。 いかに時差対Pで挑んでいるとはいえ、あまりの眠気に辛くなってきた。 しかし、この飛行機こそ、オーロラとのファーストコンタクト。 この我輩ががっちりプランニングしてきたのだ。 オーロラ観測の機会は最大限に確保している。 すなわち、①この機内②今夜③明日の夜④明後日の夜⑤帰国便の機内の、 計5回の観測チャンスを設けているのだ。 ぶっちゃけ、我輩は太陽王であるからして、 あっさりこの機内から しかも、宇宙天気予報によると、比較的オーロラの動きは活発化しているとのこと。 これはかなりの確度で見れるのではないかという自信はあるが、 大金はたいて来てるのだから、見れなくては話にならんからな。 念には念をだ。 絶対見てやるぞ。(炎) 意気込んでいるうちに、アイスランド航空455便は 現地時間21:02(日本時間30:02)、アイスランド・ケプラビークへ飛んだ。 今日日本で目覚めてからすでに25時間が経過。 途中時差対Pを発動して睡眠をとったとはいえ、これは眠い。 こんなことにならないための時差対Pなのに。 えぇーい完全な作戦とはならんとは!! ・・・結局ウトウトしまくり、我輩の糸目は横線と化し、 メシも飲み物ももらいそこね、 ようやくオメメがパッチリしたのは到着の1時間ほど前だった。 時間的にもそろそろオーロラオーバルに差し掛かる頃。 さっそく観測開始。 何? オーロラオーバルとは何かって? 聞かれてないが教えてやろう。 オーロラは、南北極点を中心に発生する丸い光の帯。 そのオーロラが描く円のことをオーロラオーバルと呼ぶ。 その光の帯の下付近に行かないとオーロラは見れないわけだ。 さらにオーロラは雲よりはるかに高く現れるため、 雲より高いこの機内は、観測チャンスの中でも最も確度が高いと言えるのである。 さて、話はそれたが、窓から観測を開始する。
ぬ。
見えん。
観測開始から10分。
ぬ・・・。
見えん。
観測開始から20分。
ぬ・・・。
見えん。 何だよコレ見えねーよ。 そして機体は着陸体勢に入り、右に大きく旋回していく。 だいぶ高度が下がってきたのが分かる。 しかし、我が窓からはまだ星が見えている。 今夜は天気が良いのかも。 そう思いながら窓の外を凝視していると、小さな雲が一つ。 そして・・・薄~い雲の帯のようなものが一筋。 こんなに長い・・・雲・・・じゃないよな。 まさか・・・。 オーロラかっ!? オーロラだな!? キタコレーッ!! Υηζκνξκッ!!!(>o<)/ やはり我輩は太陽王なのだ! 狂喜乱舞のうちに、飛行機は現地時間23:32(日本時間翌8:32)、 アイスランド・ケプラビーク国際空港に着陸。 そしてすぐに撮影したのがコレ。 何も分からんが、画像右下にはオーロラが写っている。 さぁっ早くっ 早く降ろしてっ! オーロラが消えちゃったら 先を争って降り、入国審査を急いで抜け、 出口に待ち構えるスーパーマーケットに見向きもせず、 空港をダッシュで駆け抜けると、出たところに今度はコンビニ。 ・・・晩飯にチョコぐらい買っていくか。 それと、あまりに情報を持ち合わせていないので地図帳も。 偽「ポンド使える?」 「イエス」 ということで、ポンドでお支払い。 お釣りは現地通貨アイスランドクローナ(以下ISK。1ISK=1.8円)だった。 我輩はコインコレクターではないが、レアな現地通貨は思い出の一つ。 特にコインは日本では手に入れられないからね。 使い切らずに少し持ち帰らないとな。 ・・・イカン! そんなことよりオーロラ!! 早足で空港を出て、糸目をさらに細くして目を凝らすと、 先ほどの帯がうっすらと見えた。 さっそくミニ三脚を設置し、日本で設定してきた「オーロラモード」で撮影開始。 コレ。 コレがオーロラさ! まだまだ満足できる写真ではないが、 何も撮れずに帰国という最悪な事態を回避できたことは良しとしよう。 それにしてもすごい星空だ。 まるでアイスランドが太陽王の到着を祝っているようですらある。 しばらくぼーっとした後、市内行きのバス乗り場を探すことにした。 準備万端な我輩は、当然市内までのバス「Flybus」を予約済み。 あとはバス乗り場を探すだけなんだが、これがなかなか骨が折れた。 やっとこ見つけて荷物を入れてもらう。 「ホテルはどこだ?」 偽「Skjarbreid」 「オーケー、このバスはバスターミナルに着くから、 偽「了解。サンキュー」 ホテルまで直行してくれるのかと思ったが、どうもそうではないらしい。 バスは結構混んでいるが、誰も怪しい東洋人の横には座りたくないようで、 おかげでゆったり市内へ向かえることとなった。 ケプラビーク国際空港からレイキャビク市内までは約1時間と聞いている。 0:02に発車したから、ホテルには1:00頃か。 ということは日本時間で10:00。 遠いのぅ。 バスはなかなかご機嫌なスピードで走っていく。 夜の長い土地柄もあってか、街路灯がしっかり整備されているようで、 住宅街はまるで飾り付けされてるような眺め。 市内への道路もしっかり街路灯があり、明るすぎて見えにくいものの、 暗くなるとぼや~っとオーロラが見える。 こんなに晴れてるんだから、オーロラを撮影するなら今夜しかない。 強く思いながら、バスターミナルに到着。 ミニバスに乗り換えて、Skjardbreidホテルに着いたのは予想通り1:00だった。 さぁ早く街に出て写真撮影に移らねば!! 部屋に荷物を放り投げ、トランクから大型の三脚を取出し、街に出る。 おっとその前に。 偽「このホテルの入口は一晩中開いているの?」 「は?ゴメン、何て?」 偽「・・・。入口、開いてる、一晩中?」 「ノー、インターホンでコールミー」 偽「了解、サンキュー」 スイスのことがあるからな。 きちんと調べねばならん。 安心して改めて街に出る。 一応周辺のことは頭に入れてある。 自信を持って、レイキャビクのシンボルとも言うべき大聖堂、 ハトルグリムスキルシャへ歩いていく。 ・・・ハズだったのに、なぜか海に出てしまった。 なぜ? ベルギー以来方向感覚は戻ってきていないのだろうか。 そういえば最近気になっているのだが、 近頃自分の進行方向が上になるように地図をグルグル回転させないと、 行きたい所にたどり着けなくなった。 ・・・老いがかくも恐ろしいものだとは。 まぁそんな悲しい現実は老いといて、いや、置いといて。 皮肉にも海に出たことで現在地とホテルの場所を正確に把握することができた。 どうやら大聖堂とは正反対に歩いてしまったようだ。 戻る前に、オーロラ観測。 実はこの海沿いの道は、今夜の観測ポイントと決めていたのだ。 海のような暗い方向でないと見づらいと思っていたからね。 しかし、思った以上に街路灯は至るところに設置されていて、 こんな場末の海岸通りも随分明るい。 とりあえず撮ってみる。 それがコレ。 うっすらオーロラが写っているのは、帰国してパソコンで見てから分かった。 周りの明るさで全く見えないほど、このオーロラは光が弱かったわけだ。 写っていないと思った我輩は、今夜の撮影をあきらめ、 大聖堂だけ見て、眠ることにした。 ハトルグリムスキルシャは変わった形をしている上にかなりでかく、 これを目印に方位を確認できる。 何枚か写真を撮って、もう疲れたしホテルに帰ろうとしたまさにその時。 悲劇は訪れた。 あ。 手袋無い。 落としたかな。 (十字路の角に落ちた手袋発見) あ、あったあった。 タッタッタッ・・・あっコラッガシャッ。 デジカメ落下。 だーっ!!\(ToT)/ 慌てて拾い上げ、液晶やレンズに傷が無いかチェック。 ・・・ホッ。 何ともないようだな。 全く慌てさせやがって・・・。
・・・。
あれ。
電源入りませんけど。
・・・あれ? アレーッ!?
よく見ると、電池ケースのフタが壊れて 閉まらなくなっているではないか!! NO~ッ!!\(ToT)/ よくよく調べると、本体に引っ掛けるフックのような部分が吹き飛んでいた。 それさえ見つければあるいは・・・と思い、一生懸命探すも、 暗い中で黒い小さなパーツを見つけるなんて、 吉村作治が遺跡を発掘するより困難だ。 10分探して断念。 それより、この閉まらないフタをどうするか。 フタを押さえながら撮影もできなくはないが、 オーロラ撮影のようにシャッターを長時間開けながら、 かつフタを押さえながら撮影するなんて無理! 撮れる撮れない以前にブレてしまう。 いきなり訪れたかつてない危機に、目の前が真っ暗になった。 まだアイスランドに着いて何時間も経ってないのに・・・。 茫然自失でホテルに帰り、部屋で思案に暮れる。 とにかくフタが閉まれば良いんだ。 輪ゴムがベストだが、生憎持ち合わせが無い。 フロントで輪ゴムもらえないかな。 何ていうんだ? ラバーリングか? いやいや待て待て。 何か・・・何かないか。 紐・・・靴ひも・・・は無理だ。 持ち物をあさると、機内用に持ってきたスリッパの袋に目が止まった。 その袋を締める紐! これじゃーーっ!! さっそく袋を解体し、紐をほどいてデジカメを縛る。 ・・・良し。 動くぞ! 何とかなるぞ!! いくぶん安心したので、とりあえずシャワーを浴びて眠ることにした。 このホテルのシャワーは何だか変わった作りだな。 汗を流してベッドでようやく安息の時間を迎えたのは3:00だった。 何だか疲れた。 予定外に疲れた。 ・・・そういえば、時差9時間は生まれて初めてか。 いつもヨーロッパにはサマータイムに来てたからな。 まぁ何でもいいや。 寝ますか・・・。 こうしてこれまでの人生で一番長い1日は、 いきなりのオーロラ出現の興奮とカメラ破損という 波乱に満ち満ちて終わっていったのであった。 Zzz・・・ |